僕らの世界

□僕らの世界-4-
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(オズワルド)





「……ん、もう朝か」

目が覚めると、窓から光が入ってきていた。昨日は有り得ないような出来事が起こったこともあって、とりあえず早く寝ることにしたのだった。

「……少し早く起きすぎたか?」

壁に掛かっている時計を見ると、針は4時を示している。……誰も起きていないだろうな。

「……かと言って、また眠る気にはなれないな」

俺はとりあえず上着を着て部屋を出た。いつもは誰か必ずいる居間は誰もいない。……暇だ。

「…いつもみんなは何をしてるんだ?」

最近は仕事もしていないみたいだから、毎日することが無いのではないかと思う。クリスはよく本を読んでいるが、毎日読んでいればその内読む本も無くなるだろう。

「……ギルドに行ってみるか」

することが無かったため、俺はギルドに行ってみることにした。…あいつらに見られるかもしれないと思ったが、昨日確実に殺しておいてすぐに見つけに来るとは思えない。第一、あのハンターズはガレールよりも遠い場所にアジトがあるはずだ。大丈夫だろう。
俺は玄関を出て近くのギルドに向かう。徒歩一分もしないうちにギルドに着いた。何があるか分からないので冒険者ギルドはいつでも開いている。俺はギルドの中に入った。

「いらっしゃい。兄ちゃん朝から早いな」
「…早く起きたから暇潰しに来たんだ」

入ると、カウンターに座っている犬獣人が俺を見てそう言った。俺は依頼板に提示された依頼を見る。依頼板には様々な依頼があったが、大体がDやE、Cランクのもので、Bランクが二つ。A、Sランクは一つも無かった。俺は、ある程度簡単そうで、暇潰しが出来そうな依頼を探す。

「…暇潰し程度ならこれはどうだ?」

そう言って俺に一枚の依頼書を渡した。内容は“魔導師ギルドの手伝い”。詳細は魔導師ギルドで話すとのこと。ランクはD。少し遠いが移動手段が無いわけではない。……ついでに報酬もそこそこだ。

「そうだな。わかった、これにする」
「どうもぉ〜」

俺は依頼書を受け取り、ギルドを後にした。家に戻ると、ミックが出迎えてくれた。

「おかえり。ギルドに行ってたんだ?」
「ああ。……起きてたのか?」

俺が家を出てまた帰ってくるのに5分もかかってない。だとしたら多分起きていたのだろう。

「ああ、少し前に。……“あんなこと”言ったんだから、また勝手にいなくなることは無いと思ってたけど」
「……? 何の事だ?」

ミックが言う“あんなこと”とは何なのか。……特別ミックの前では何も言ってないとは思ったが。

「『俺はここにいたい! もうあんな思いしたくない!!』って言ってたじゃん?」
「……!! き、聞いてたのか!?」

その言葉は、昨日俺が隊長に言った言葉だった。あの時は無意識に出たとはいえ、部屋の外から聞かれていたとなると少し恥ずかしい。

「そんな恥ずかしがる事じゃないって! もう仲間なんだから当たり前の言葉だ! ……それに俺、オズワルドにいて欲しいからさ…」
「……俺に、いて欲しい…?」

俺は、いても良いとは何度も隊長に言われたが、いて欲しいとは言われたことは無かった。……気付けば、ミックの顔が少し赤かった。俺の顔も少し熱くなっている。

「……さ、さぁて! ご飯でも作ろうかな!!」

ミックは恥ずかしさを隠すように調理場に向かっていった。俺は熱くなった顔のまま居間のソファーに座る。

「……あ、そうだ。どんな依頼なんだ?」

調理場からミックが聞いた。居間とはそんなに離れてないから、大きな声を出さなくても聞こえた。

「…あぁ、魔導師ギルドの手伝いだそうだ」
「魔導師ギルド!? ということはベルザラントに!?」

ミックが魔導師ギルドという言葉に反応した。……ベルザラントに行くことに何かあるのか?

「どうした?」
「俺さ、一度ベルザラントとかガーランズとかに行ってみたかったんだ! ずっとガレールから出た事無かったから…」
「ミックはガレール育ちなのか?」

ガレールは世界の中心であり、人も沢山集まってくる。おそらくガレール出身の人よりも、外から来た人の方が多い。

「……まぁね。だからあんまり他の町を見た事無いんだ。………もうすぐご飯出来るから、みんなを呼んできて!」
「わかった」

俺は立ち上がり、まずは隊長の部屋に向かった。ドア越しに呼びかける。
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