僕らの世界

□僕らの世界-2-
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(オズワルド)




「………」

力試しに血識を使った時は、一瞬で昔の感覚が蘇ってきた。相手は魔物だったが同じようなものだ。俺の体に大量の力が流れるような感覚。周りの動きが全て遅くなる。そのかわり俺は自分の体を制御出来なくなる。いつもと同じ。正直、使っている時はとても辛かった。……まさか顔に出てるとは思わなかったが。あんな俺をラルドとネロに見られた。……ヴァイスはとても楽しい所だ。俺もずっとここにいたいと思っている。……だが、俺がいることでこの良い雰囲気を壊してしまわないか。俺はここにいない方が良いんじゃないか……。そんな事を考えていた。この雰囲気を壊すくらいなら俺は出ていく。他人に迷惑をかけてまで俺は幸せになるつもりは無い。……隊長に言って抜けさせてもらおうとも思っていた。そんな時に……

(お前はもうヴァイスのメンバーだ。それを忘れるな)

本当に嬉しかった。俺はみんなに迷惑をかけていない。俺はここにいても良い。……俺の事を同じメンバーと認めてくれた。

「……俺も頑張らないと。俺の出来ることを…!!」

こんなにもよくしてもらったヴァイスの為に、俺は俺の出来ることをする。

「―――オズワルド! 昼ご飯出来たよ!」

部屋の外からミックの声が聞こえる。……そういえば、少し腹が空いていた。俺はほのかに香る美味しそうな昼食の匂いに誘われて部屋を出た。












「―――ん〜! やっぱりミックさんの作るご飯は美味しい!」

隣で食べているラルドがそう言った。それは誰もが思っていることだろう。

「……僕も作ってみようかな?」
「ハッ! てめぇには無理だラルド! 俺と同じぐらい作れるようになってから言うんだな」
「……お前の作る料理よりまずい料理なんてあるのか?」

ネロの言った事に、信じられないとでも言うような視線を送りながら隊長が言った。

「いいか、ドルク? 少なくとも俺はお前よりも上手く作れる自信はある!」
「んだと!? 言ったな!! ミック! 今日の晩飯は俺とネロの料理対決だ!!」
「あっ!! 僕も作る!!」

……なんだか大変な事になってきた。今日の晩飯は覚悟しておかないといけないかもしれない。

「いいだろう! じゃあ今日の晩飯は、俺とネロ、それにラルドの作った料理だ! 審査員はオズワルドとクリス。審査員長はミックだ!!」

隊長とネロとラルドは熱い闘志をメラメラと燃やしていた。クリスはその状況を楽しそうに見ている。向かいのミックが小さな声で俺に話し掛ける。

「……予備に俺が作った方がいいかな?」
「……良いんじゃないか? たまには」
「……この三人の料理を甘く見ないほうがいいよ」
「……えっ…」

そう言ってミックは自分が作った料理を食べ始めた。……若干名残惜しむようにも見える。そんなにも酷いのか?

「……前にもあったんだ。こういう事。僕は“どうにか食べた”けど…」

クリスは苦笑して、食べ終わった皿を持って行った。……“どうにか食べた”…。どんな料理なのか想像もつかない。俺も今のうちにこの美味しい料理をゆっくりと味わうようにした。食事が済むと、三人は別々に買い出しに出掛けた。俺も手伝おうとしたが……

(おいおい、材料見たら楽しみが無くなるだろ?)
(そうだぜ。お前は留守番だ)
(お楽しみだよ!)

そう言われた。……材料を見て楽しみが無くなるものなのか? よくわからないが。

「はぁ〜……。大丈夫かな……」

居間でソファーに座っているミックがため息をつきながらそう言った。

「……どうした?」
「いやぁ、買い出しに行くのは良いけど、三人別々で買うもんだから、材料が沢山余っちゃうんだよね。あの三人、考え無しに買うから……」

そう言ってミックはまたため息をついた。……材料が余る事よりもお金の心配はしなくていいのか?

「…だからミックさんが余った材料を腐っちゃう前に使おうとするから、明後日くらいまでは凄く豪華な料理になるんだよ?」

またソファーに座って本を読んでいたクリスがそう言った。やはり材料が余らないように使おうとするところは、ヴァイスの料理係として頑張っているのだろう。
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