虚ろなる世界で…

□虚ろなる世界で…[参]
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「………消えるのが早いという意味だ」
「…そうなのか?」
「………あの大きさなら、あと数日はあのままのはずだ」
「助かる気あった?」
「俺の体なら死ぬほどではない」

…確かに、クロードは傷とかの回復力が凄く高いけど、それとこれとは違うんじゃないのか? それとも、“アレ”とクロードの体に何か関係があるのか?

「……“アレ”って―――」
「もうその話は止めろ」

クロードは俺の言葉を遮ってヨロヨロと立ち上がる。倒れそうなクロードに俺は肩を貸してあげた。

「………自分で歩ける」
「強がってもダメだから」
「…………すまない」

クロードも今回ばかりは辛いと感じたのか、何故か俺に一言謝って、素直に俺に寄り掛かった。

「………あいつはアフターエイジに連れていったのか?」
「途中でハンス達と合流したから、レンはハンス達に預けてきた」
「…………後でどうなっても知らんからな」
「えっ、なにが?」

俺が尋ねてもクロードはため息をつくだけで、答えてはくれなかった。

「…レン、折角みんな心配してレンを探したっていうのに、俺なんて放っておけばいいだろ、なんて言って……。こっちの気もしらないで、ねぇ?」
「………お前は、時に残酷な事を言う…」
「……?」
「………そういうお前も、あいつの気持ちを分かっているのか?」

…俺には関係のない話だがな。そう最後に付け加えたクロード。……レンの気持ち…? そういえば、レンは俺とハンスがアレをシてるのを見たと言ってた。でも、なんでそれでレンが気分を悪くするのかが分からない。普通、全裸になってたこっちのほうが恥ずかしいんだけど……。

「クロードも俺とハンスがシたことは知ってるんだよね? 確かそんな感じのこと言ってたし」

レンが出ていった理由が分かってるみたいだった。レンが出ていった理由が俺とハンスのアレだとしたら、クロードもシたのは知ってるはず。

「…………声が…聞こえたからな…」
「クロード、耳良いんだね。それで、クロードも俺がハンスとヤってるのを知って嫌だった?」
「…………何故俺に聞く」
「今クロードしかいないし。俺しか聞いてないから良いだろ? 誰にも言わないからさ」
「知らん、俺に聞くな」

クロードは何故かムスッとした風にそう言って、何も答えてはくれなかった。…クロードも嫌だったら、レンの気持ちも分かりそうだったのに。

「じゃあ、俺のこと好き?」
「………お前に何を言っても無駄なようだな」

それ以降、クロードは俺の問い掛けに一切答えることはなかった。…あともう少しで分かりそうな気がしたんだけどなぁ。帰ったらレンに直接聞こうかな。




















「ただいまー」

俺達がアフターエイジに帰ってくると、何やら騒がしかった。……レンの部屋が騒がしいみたいだけど…。

「…ルー、何かあったのか?」

俺はレンの部屋の前でふさぎ込んでるルーに話し掛けた。

「あ、アル兄とクロ兄! 帰ってくるのが遅いよ!!」
「…え、ご…ごめん」
「………何が起きているか、大体予想はつくがな」

何故かいきなりルーに怒られた俺達。クロードはレンの部屋で何が起きているか分かってるみたいだけど、俺にはさっぱりだ。…レンの声とガタガタ大きな物音がするけど……。

「…レン兄とハンスさんが喧嘩し始めて……」
「えっ!?」
「喧嘩って言うよりも、一方的にレン兄が…」

俺はクロードから離れてレンの部屋のドアを開ける。

「―――ッ!! ハンス!」

部屋の中は悲惨な状態で、物が散乱していた。部屋の角では、ボコボコになった鉄パイプを持っているレンと、体中痣だらけで壁に寄り掛かって倒れているハンスがいた。

「おら、早く立てよ!!」

レンはハンスの腹に容赦なく蹴りを入れ、鉄パイプで何度も胸や横腹を力一杯叩いた。ハンスは血の混じった胃液を苦しそうに吐きながら、レンに言われた通り立ち上がる。

「何やってんだよ、レン!!」
「…あぁ? 関係ない奴は出てくんじゃねぇよ」

レンはゆっくりこっちを向いて、俺を睨んでくる。…その表情は今まで見ていたレンとは全くの別物で、俺は思わず一歩後ろに下がっていた。

「……ンだよ、その顔。大好きなハンスさんがこんな姿でボコられてショックか、アルフ? お揃いにしてやろうか?」
「……よすんじゃ、レン……アルフは―――」
「てめぇは黙ってろ!!」

レンは振り向きざまにレンの脇腹に鉄パイプを叩き込んだ。ハンスはまた倒れ込んで、苦しそうに咳込む。……何が、どうなってるんだよ……!?
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