虚ろなる世界で…

□虚ろなる世界で…[参]
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「……くっ、俺のことは心配するな。とにかくソイツを早く連れて帰れ!」

“アレ”からなんとか顔だけ出して俺にそう言うクロード。…そうだ、レンを早く休める場所に連れていかないと……!

「……絶対、すぐに戻ってくるから!!」

俺はクロードにそう言って、刀を持ちながらで背負いにくいながらも、なんとかレンを背負った。脱力しきったレンの体は重かったが、そうは言ってられない。
俺はなるべくクロードの方を振り返らないように部屋を出た。



















「…はぁ、はぁ……」

俺は小走りで来た道を戻っていたが、流石にレンを背負いながらで疲れた。俺はその場にレンを寝かせ座り込む。

「……レン」

俺はレンの頭を軽く撫でてみた。…どうしよう、このまま目が覚めなかったら……。

「……ぅ、うぅん…」
「レン! …大丈夫!?」

レンはゆっくりと目を開けて俺を見た。まだぼんやりとしてそうだけど、ひとまず安心。

「…アルフ……」
「……良かった。目が覚めなかったらって心配―――」
「俺なんて放っておけばよかっただろ」

レンは俺から顔を逸らして確かにそう言った。……何言ってんの?

「なんで俺なんか探してんだよ」
「なんでって……心配だからに決まってるだろ!?」
「…心配? 俺を?」

レンは呆れたようにため息をつくと、わざとらしく申し訳なさそうに口を開く。

「ハンスと楽しくヤってる時に、邪魔して悪かったな」
「…なに言って―――」
「見たんだよ、俺は! お前らがヤってるのを……!!」

レンは息を切らせながら俺を睨んで大声を出した。

「…ちょっと言い過ぎたって、ハンスに謝ろうとしたら何だよ。そっちは俺の気も知らないで……」
「…でも、あれは―――」
「アル兄!!」

俺の言葉を遮ってルーの声が聞こえてくる。声のした方を見ると、ルーとハンスがこっちに向かってきていた。

「レン兄、見つかったんだね!!」
「アルフが心配じゃとルーが泣き出してのぅ…」
「いや、泣いてないから」

ルーは真顔でハンスにそう返した。…確かに、それだけで泣いてたらビックリだよ。

「…クロードはどうしたんじゃ?」
「…そうだ! ハンスとルーはレンをお願い! 俺はクロードを助けにいかないと!!」
「…よくわかんないけどオッケー! レン兄はハンスさんが背負うから任せて!!」

ルーがそう言うと、ハンスはレンを背中にからう。レンは嫌な顔してるけど、大人しくハンスに背負われてる。…レンはハンスとルーがアフターエイジに連れてってくれるから大丈夫。レンの態度も気になるけど、今はクロードが心配だ。
俺はクロードの刀を持って、来た道を戻った。




















「………ッ!? なんだ…?」

孤児院が見えた時、俺は次々と孤児院に入っていく“アレ”を見た。……嫌な予感がする。
俺はレンのいた部屋へと急ぎ、勢いよく扉を開ける。

「―――クロード!!」

クロードは仰向けになって倒れていた。あの大きかった“アレ”は今では部屋を殆ど埋めるほどに大きくなって、クロードの胸に身体の一部を突き立てている。その他のクロードの体には、小さな“アレ”がうじゃうじゃと群がっていた。

「…今度は、俺が守らないと―――ッ!!」

俺が刀を握りしめて“アレ”に向かおうとした瞬間、巨大な“アレ”から太い触手のようなものを勢いよく何本も伸びてきて、避ける暇もなく俺に突き刺さる。
しかし、痛みを感じる前に突き刺さった“アレ”が霧散した。

―――アァァァァ…

突然うめき声を上げて霧散していく大きな“アレ”。それを見てかは分からないが、クロードに群がっていた“アレ”も勢いよく俺に飛び掛かり、俺にかぶりついた瞬間、同じように消えていく。……よく分からないけど、“アレ”はもう怖くない!

「クロード! クロード!!」

俺はクロードを揺さぶるが、起きる気配はない。体も心なしか冷たい気がする。……起きるよね?

「…………アル…フ…?」
「―――!! クロード!!」

クロードはゆっくりと目を開き俺を見た。俺はクロードの手をぎゅっと握る。

「………“アレ”は…」
「俺にかぶりついたら消えた」
「………そんな、消えないはず……」
「そんなことどうでも良いよ! …ホントに、よかった……!」

俺は安心してクロードの体に抱き着いた。…少し冷えているクロードの体を温めるように。

「……ちょっと待って」

俺はクロードに抱き着くのを止めて、クロードの顔を見て言う。

「消えないはずってなんだよ」
「…………忘れろ」
「助かるつもりも無いのに心配するなとか言ったのか!?」

……クロードにも困ったもんだ。助かる見込みがあるからあんな発言をしたんだと思ったのに。
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