虚ろなる世界で…

□虚ろなる世界で…[参]
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「…ここにはいないみたい」

一通り探し回ったけど、レンがいそうな感じはしなかった。

「………大丈夫か?」
「クロードが守ってくれてるからね」

たくさん浮遊している“アレ”。こちらから近付いたりしなければ襲って来ない奴もいれば、いきなり襲って来る奴もいる。でも、襲って来たのはみんな、クロードがやっつけてくれてる。

「……気分が悪くなってたりしないか?」
「…大丈夫だけど、どうしたの?」
「…………ただ、心配しただけだろう」

クロードはそう言ってすたすたと建物を出る。俺も続いて建物を出て、次に探す建物を決める。

「…レン、どんな所にいるか分からないからなぁ……」
「………分かれば苦労しない」
「それはそう―――」

……ピッ……ピッ……





―――ぅ……ぁ…





「…………どうした」

俺はその場に立ち止まり、辺りを見回してみる。……頭に響いた機械音と誰かの声。……誰か? 違う、今のはレンだ。苦しそうな声だった。ただ事じゃない。

「…こっち、急いで!!」

俺は“アレ”も気にせずに道を突っ走る。クロードが何かを言ってるけど、今はそれどころじゃない。……レンの居場所が分かる。いや、レンだけじゃない。ハンスもルーも、ナユタの場所も手にとるように分かる。……でも、なんで…?



















「……多分、ここ」

俺がたどり着いた場所は、一階建ての大きな建物だった。ボロボロでどんな用途で使われていたのかわからないけど、玄関の横に微かに児童館と書かれているのが分かった。

「………ここは、孤児院だ」
「クロード、知ってるの?」
「…………少しの間、世話になった」

クロードはそう言って孤児院の中に入っていく。俺もクロードに続いて孤児院の中へ。
中は思ったより広く、部屋もたくさんありそうだ。

「………なぜ孤児院なんだ?」
「…分からない。なんか知らないけど、多分ここにレンはいる。部屋までは分からないけど」

とりあえず俺達は部屋を一つずつ見て回ることにした。建物の中もボロボロで、かろうじて寝室だったり遊ぶとこだったりというのが分かる。
幾つか部屋を見て、気付いた点が一つ。

「…“アレ”が全然いないな」

今まで孤児院を探索していて、まだ“アレ”を一度も見ていない。…こんなことってあるの?

「……ん?」

通路を曲がって1番奥。磨りガラスの付いた大きな扉があった。磨りガラスの向こうが青白く光ってるから、あの部屋に“アレ”はいるみたいだ。…磨りガラス一杯に光ってるから、相当大きいのかもしれない。

「―――待て」

俺がその扉を開けようとすると、後ろからクロードが声をかけた。

「………俺が開ける。下がっていろ」

クロードはそう言って両開きの扉に手をかける。俺は言われた通り少し離れた場所に移動した。…結構大きそうだけど、大丈夫なのかな?
クロードはゆっくり扉を開けた。

「―――グゥ……ッ!!」
「クロード!?」

扉を開けた瞬間、開いた隙間から青白くて細長い何かがクロードの体を貫いて、そのまま巻き付きクロードを部屋の中に引きずり込んだ。俺は慌てて部屋の中に入る。

「―――入ってくるな!!」

……クロードの言葉が俺に届いたのは、俺が部屋に入ってから………扉のすぐ横で、刀であの細長いのを切って助かったんだろうクロードと―――

「―――レン……!?」

巨大な“アレ”の中で意識もなく倒れているレンを見てからだった。

「レン!! …レンッ!!!」
「よせっ、近付くな!!」

クロードは俺を引っ張り後ろに立たせ、襲い掛かる“アレ”の触手を刀で切る。

「クロード、レンが!!」
「………くっ!!」

触手は俺に向かって“アレ”の至るところから伸びて来る。刀を持ってるクロードに触手を伸ばしても、切られると分かってるんだ。…俺が狙われてるんなら…

「俺がアイツの注意を―――」
「アルフ、これを持て」

クロードは俺の言葉を遮って、持っていた刀を俺に持たせた。……ちょっ!? こんなの扱えないんだけど!?
刀を俺に持たせると、クロードはすぐに“アレ”に向かって走っていく。

「クロード!?」

触手はクロードに向かって伸びていき、何本もクロードに突き刺さり、引きずり込む。クロードは痛みに顔を歪ませながら“アレ”の中に入り、レンを担いでこっちに投げ飛ばした。

「……ソイツ…連れ…逃げろ…!!」
「な、何言ってんだよ!?」

手に入れた獲物を離すまいと、“アレ”は大きく広がっていた自分の体(?)をクロードのいる所に凝縮させた。更にクロードは痛みに呻き、膝をついた。……クロードを見捨てて行けるわけないだろ!?
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