虚ろなる世界で…

□虚ろなる世界で…[参]
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「ワシも捜しに行くゾイ!!」

ハンスはこれだけは譲らないと言わんばかりに胸を叩いて言った。…ハンスが責任を感じてる。いまいちレンが出ていった理由が分からないけど、クロードも言ってたし、多分ハンスの行動が関係してるんだと思う。ハンスが自分で捜しに行きたい気持ちも分かる……

「………言ったはずだ、お前では逆効果だと。謝って済む問題ではないだろう」
「…じゃが、ワシは……ッ!!」

ハンスは力一杯拳を握りしめ、悔しそうに顔を歪ませる。

「…一緒に捜しに行こう、ハンス」
「…アルフ……!!」
「よく分からないけど、話してみないとレンの気持ちとか分からないままだし、良くならないからさ。…クロード、良いだろ?」
「………お前が良いならそれで良い」

…ゴメンね、クロード。レンやみんなのことを思って言ったんだと思う。でも、積極的に関わっていかないと、根本的に良くならないからさ。

「…俺が残るよ」

苦笑いを浮かべてそう言ったのはナユタだった。

「…良いのか? ナユタもレンが心配だろ?」
「でも、俺が行っても何もできないと思うし………ちょっと…」
「―――ッ!!」
「……? もしかして、具合悪いのか?」

俺の言葉にナユタは小さく頷いた。最初は気付かなかったけど、ナユタの顔色が良くない気がする。……クロードが珍しく反応してナユタを見たけど、何かあるのかな?

「…少し寝れば治ると思う。俺のことは心配しなくて大丈夫だから…レンさんよろしくね」
「……うん。なるべくすぐ戻ってくるから」

俺はナユタにそう言って、ナユタに見送られながらみんなでアフターエイジを出る。

「どこを捜すかの?」
「とにかくレンがいそうな所を捜すしかないよ」

…レンがいそうな所なんて、分からないけど……。

「……レン兄、泣いてたんだ…」
「……えっ?」

珍しくあまり喋らなかったルーが、顔を俯かせてそう言った。…レンが泣いてた……?

「お昼ご飯食べた後、レン兄の様子見に行ったんだ。…そしたらベッドの上で泣いてて……。声掛けようとしたらすぐに追い出されちゃった。……レン兄と長く一緒に居たけど、レン兄が泣いてるの、初めて見た……」

そう話すルーの顔はとても悲しそうで、その事実がどれだけショックの大きいものなのかが分かった。……早く、レンを見つけてあげないと………!!

「………4人固まって行動していても効率が悪い。二手に分かれるぞ」
「…そうじゃの。それじゃあワシはルーと南部と東部を捜す。アルフはクロードと一緒に北部と西部を頼むゾイ」
「分かった。2人とも気をつけてね」
「アル兄こそ、気をつけてね。クロ兄も、アル兄をしっかり守ってよ!」
「…………」

クロードはルーに言葉を返すでもなく、さっさと歩いて行ってしまった。俺もクロードの後に続いて、まずは北部の探索。

「……レンが行きそうな場所、どこか分かる?」
「………俺に分かるはずないだろう」
「それじゃあ、一つ一つ建物の中を見ていこう」

そう言って俺は辺りを見回してみる。夜で暗く、普通なら辛うじて物の陰が見える程度。だけど所々に見える青白く光るモノ……俺達の言う“アレ”がいるおかげで、少しは見やすい。

「……“アレ”って何なんだろうな」
「………お前は知らなくて良い」
「クロード、知ってるの…?」
「…………」

近くの建物に入っていくクロード。俺はただクロードの後ろをついていく。……クロードって一体何者なんだ…?

「……ナユタが具合悪いって言ったとき、妙に反応してたよね? それに、前から言ってたけどクロードのしたことって―――」
「今は俺の話をする場合ではないはずだが?」
「………うん、ゴメン」

……そうだな。今はレンを捜しに来てるんだ。レンの事に集中しないと…。

「―――ッ! わぁっと!?」

突然、クロードに腕を引っ張られて、俺はクロードに片腕で抱きしめられる形になった。その後すぐに俺のいた所に“アレ”が通り過ぎ、素早くクロードがそれを刀で斬る。苦しそうな声を上げて消えていく“アレ”。

「………大丈夫か?」
「…うん、ありがとう」

クロードは心底心配そうな表情で俺を見つめる。………クロード、ホントに何者なんだ…?
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