虚ろなる世界で…
□虚ろなる世界で…[壱]
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―――アァァァァァ………!
「―――ッ!?」
俺がどうすることも出来ずにいると、突然光は唸り声をあげて霧のように消えていった。
俺はすぐそこに何かの気配を感じ、顔を上げる。
「…………」
「……虎、獣人…?」
顔を上げた先には、左手に小さな瓶を持ち、黒いマントを羽織った黒虎獣人がいた。
「………立てるか…」
「え、ぁ………ありがとう…」
虎獣人は俺に右手を差し出した。突然の事に戸惑いながらも、俺は礼を言ってその手を掴む。
虎獣人の手を借り立ち上がって、俺は虎獣人の顔を見た。右目には縦に切り傷のようなものがあり、左耳の先は綺麗に無くなっている。
「…………」
「……あの…」
虎獣人は俺の顔をジッと見つめたまま、俺の握った手を離そうとしない。俺も何だか目を逸らしてはいけない気がして、ずっと見つめ合ったままになってしまう。
「………俺のこと、どう思う…?」
「え? いきなりそんな……う〜ん……同じ生き残りが見つかって嬉しいし、俺のこと助けてくれたから、一緒に住んで欲しい…かな?」
いきなり質問されてビックリしたが、俺は虎獣人にそう返した。…みんなも、また家族が増えれば嬉しがるはずだ。
「………俺のしたことを知っても、そう言えるか?」
「……? あ、ちょっ―――!」
虎獣人は表情を変えずに俺に言うと、俺の手を離し走ってどこかに行ってしまった。……名前くらい教えてくれたって良いじゃないか…。
「―――あっ! アル兄!!」
虎獣人が去るのとほぼ同時に、後ろから聞き覚えなある声がした。俺が振り返ると、袋片手にルーが走って来ている。
「どうしたの? こんな所で」
「暇潰しにちょっとな。…いっぱい見付かったか?」
「びみょ〜…」
そう言って袋を揺らすルー。カシャカシャと何かが擦れ合う音が聞こえるが、ルーの言う通り量は少なそうだ。
「アル兄はこれからどうするの?」
「ルーを見付けたら一緒に連れて帰るよう、レンに言われてるんだ。だから帰る」
俺をガラクタ集めに誘おうとしているのか、俺の手を握ってきたルーだが、俺はルーにそう言って握られた手でルーの手を握り返して、アフターエイジへの帰路を歩く。
「えぇ〜!? まだ帰らないよ〜!!」
「ダメだ。俺だってさっき危ない目にあったんだからな?」
駄々をこねるルーを引っ張りながら俺はそう言う。
「危ない目!? アル兄、何があったの!?」
「大袈裟だぞ、ルー。…なんか青白い光に襲われただけだよ」
グッと俺の手を握るルーの手に力が入ったのを感じ、俺は苦笑いをしてルーにそう言った。……それにしても、アレは何だったんだろう…
「“アレ”に襲われたの!?」
「……? …あぁ〜、アレがそうなのか。俺初めて見たから全然分からなくてさ。触ろうとしたらいきなり腕にくっついてきて、引きはがそうとしても触れなくて、ホント危なかったよ」
今でもさっきの感覚が残っていて、思い出しながらルーにそう話した。
「…あ、そうだ。みんなに伝えたい事があるんだよ」
「え、なに?」
「帰ってからのお楽しみ」
「早く帰ろーよアル兄! 走って走って!!」
俺の言葉を聞いて、急かすように手を引っ張るルー。……聞いたらみんな驚くだろうなぁ。