捧げ物
□ギルさんに16000Hitキリリク!
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「……ってて…」
落ちた時に打った腰を押さえながら立ち上がった。
「な、なんでおおお前が俺のベッドに寝てんだよ!!?」
ネロが顔を真っ赤にしたまま俺を指差してそう言った。……ほら、お前のせいでオズワルドが起きちまったじゃねぇか。
「俺が起きたら、お前が例の如く床に寝てた。お前がドルクゥ〜って言うから、俺はお前を抱えてベッドに戻した。そしたらお前が俺の服の裾を掴むから、仕方なく起きるまでベッドに寝た。……分かったか?」
俺はさっきの行動をつらつらと並べ、ネロに言った。ネロは寝ている間の自分の行動に恥ずかしくなったのか、俺をまともに見れずに俯く。
「…大体、お前どんな夢見てたんだよ。さっきの続き…って俺にキスす―――」
「あああああ!!! 喋んな、喋んな!!! …オズワルド、お前は何も聞いてないだろうなぁ!! あぁ!?」
俺の言葉を遮って、ネロは後ろのオズワルドに振り返ってそう言った。
「いいじゃねぇかキスくらい、なぁ?」
「あぁ。ネロが隊長を好きなら当然だ。恥ずかしがることはない」
俺の意見に当然だと賛同するオズワルド。…他の3人も起きちまったな…。
「……ねぇ、朝から何の話してんの…?」
「ネロが隊長に寝起きからキスをしただけだ。……俺も…」
「えっ? ちょ、オズワ―――!!」
…朝から元気で何よりだ……。
「んじゃあ、いよいよ桜を拝みに行くか!!」
しばらくして、ようやく落ち着いた俺達は、準備をして荷物を持った。
「隊長、朝ご飯食べないんですか?」
「朝飯なんて食べてたら、良い場所取れねぇだろ? 我慢だ、我慢」
俺はラルドの問いにそう返した。…昨夜見た、メルに似た兎獣人のいたあの場所、もし空いていたならあそこにしよう。
「そうですね。一応家からお菓子類は持ってきましたけど…」
「それだけあれば十分だ。…行くぞ!」
俺はそう言って一晩だけ泊まったこの部屋を出た。
「………? メルがいねぇな…」
カウンターまで降りてきたが、どこにもメルの姿が無かった。食堂に行ってみたが、そこにもいない。
「…ん、これは…」
「……置き手紙か?」
カウンターに戻ってきた俺は、隅の方に置いてある手紙に気が付いた。……なになに?
―――お客様へ。
桜の花見に向かわれるようなので、そちらの方でお待ちしております。
―――メル
「…へぇ〜。ってことはメルさんもチケット持ってるんだ?」
手紙の内容を見たミックがそう言った。……昨夜のは、メルじゃないもんな? ちゃんとチケット持ってるんだろう…。
「そういう事なら早く行こうぜ? 待たせちゃ悪いだろ」
「…そうだな」
ネロの言葉に同意し、俺は手紙を元の場所に戻して宿を出た。……いよいよ酒が飲めるぜ!!
「―――チケットを拝見させていただきます」
人だかりと地図を便りに、俺達は花見の場所までやってきた。……それにしても…
「凄いね!! あんな大きな桜がたくさんあるよ!!」
「近くで見たらもっと綺麗に見えそうだね!」
入口前から見えた桜を見て、ラルドとクリスがはしゃぐ。……円形の広場に、数十本もの桜の木が立っていた。その全てが綺麗な桃色の花を咲き誇らせ、どれが1番綺麗かだなんて見当もつかない。…まさかこんなにも綺麗だなんてな…。
「おら、はしゃぐのは近くに行ってからにしろ?」
俺はそう言って警備員の熊獣人にチケットを見せた。
「それでは、リョウの桜を十分に楽しんでください」
全員のチケットを見た熊獣人はそう言って、入口を開けた。…うっしゃー!! 酒飲むぞぉ!!!
「…それにしても、人がたくさんいるなぁ…」
入って早々、ミックが周りを見回してそう言った。…確かに、俺達は結構急いで来たつもりだったが、どこもかしこも桜を見に来た獣人でいっぱいだった。
「―――皆さーん!!!」
俺は例の場所を探していると、俺達に向かって声をかけてきた。…メルだ。
「朝は失礼しました。場所取りの為に朝早くから並んでいたもので…」
「場所取ってくれたの!? やったぁ!!」
走ってきたメルが俺達にそう言うと、ラルドは喜びのあまりメルに飛びついて喜んだ。…場所取りしてくれるなんて、ラッキーだったな。
俺達はメルの取ったという場所に向かった。