捧げ物
□ギルさんに16000Hitキリリク!
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「あぁ〜さっぱりした」
結局一人で風呂に入ることになったが、まぁいつもと変わらないと考えればいい。……それよりも…。
「……心霊体験、初めてだな…」
あれがメルじゃなかったとしても、確かに俺は兎獣人が消えるのを見た。…あれだけはっきり見えたんだから、気のせいじゃないだろうなぁ…。
「……まぁいいか。貴重な体験が出来たという事で」
俺はそう思うことにして、部屋に戻った。部屋では既に電気を消していた。…なんだ、もう寝たのか。
「……ドルク」
「なんだ、起きてたのか」
一つベッドの上の影がムクッと起き上がりこっちを見た。……ネロは俺がいないと寝むれないだろうからな。
「……見に行ったのか、桜…」
「それなんだがな、暗かったし警備もされてて、下見どころじゃなくてよ」
俺はネロの横のベッドに腰掛けそう言った。……残念だ。
「帰ってくるのが思ったよりも早かったからな。そうだろうと思ったぜ」
ネロはどこか嬉しそうにそう言う。…だからこそ、明日は早く起きねぇとな。
「…………おっ、そうだ。俺が出てからメルを見たか?」
俺は外をみてふと思い出し、ネロに聞いた。
「あぁ。見たも何も、ラルドが誘って風呂も一緒に入ったし、宿からは出てなさそうだったぜ?」
「……そうか…。いや、外でメルに似た奴を見てな? 宿を放っておいたら、ネロが何かするんじゃないかと心配になったもんでな」
「何もしねぇよ!」
もう俺は寝るぞ、とネロが布団に潜り込んで言った。……本当はずっと俺を待ってたくせに。
「……おやすみ、ネロ」
「……………おぅ」
恥ずかしがりながらもそう返事を返すネロ。……さて、俺も早く寝るかね。
「……んがぁ〜…ぐぅ〜…」
「………ん」
俺は隣からくる音に目が覚めた。俺は体を起こして隣―――ネロのベッドを見た。
「……んごぉ〜……んがっ! ……ぐぅ〜……」
「………ハァ、またか…」
鼾の発信源であるはずのベッドには誰も寝ていない。……ネロ、お前はどれだけ床に寝れば気が済むんだ?
「……ん、んぅ〜……ドルクゥ〜…」
「……はいはい」
ベッドから落ち、床で寝ているネロの寝言に答えて、俺はネロを抱えた。
「……よいしょっと……ん」
俺は起こさないようにネロをベッドの上に戻したは良いが、服の裾をいつの間にかネロに掴まれていた。……外そうと思えば外せるが……。
「………うしっ。ちょっと狭いが……」
俺は掴んでいる手を外さずに、そのまま俺もネロと同じベッドに寝た。……落ちそうだから、ネロの体を抱きしめておこう。
「………ネロ…」
すぐ間近にはネロの寝顔。俺と同い年には見えないような、少しガキっぽい顔だ。…この顔が幸せそうに笑うためなら、俺はどんな努力も厭わないだろう。
「……ん、んぅ…?」
「…おはよう、ネロ」
さすがに違和感を感じたのか、ネロが薄く瞼を開けて、金色の鋭い瞳を見せた。……さて、ここでネロは顔を真っ赤にして―――
「……さっきの…続きだ…」
「……お、おいネ―――んぐぅ!?」
ネロは俺の顔を少しだけ見ると、何の続きかは知らないが俺にディープキスをし始めた。……これは、予想外だな……!!
「…ん、んふぅ……!」
俺の口の中に入ってきたネロの舌に、俺の舌を絡ませる。……本当は俺が入れるはずなんだが、困ったな…。これはなかなか……
「……ん……んぅぅぅ!? ブハァ!!!」
突然ネロは薄く開けていた瞼をカッと開き、俺とのキスを中断させた。……こいつ、寝ぼけてたな…?
「……な……な……っ!!!」
「…はぁ、はぁ……。先に言っとくが、“お前からし出した”んだからな…?」
今更顔を真っ赤にして俺を見るネロに、俺も顔が熱くなるのを感じながらそう言った。……予定とは随分違う方向にいってしまったな。
「………っ!! は、放せ!! 放せよ!!!」
「うぉっ!? ちょ、バカ―――」
俺に抱きしめられてるという事に気が付いたネロは、腕で俺を思いきり突っぱねた。…そんなことしたら……!!
「「……ぁ…」」
―――ゴスン……
案の定、なんとも地味な音を立てて、俺とネロはベッドから転がり落ちた。……何やってんだ、俺……。