捧げ物
□ギルさんに16000Hitキリリク!
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「お前ら早く風呂入れよ。明日は早起きして行くんだからな」
部屋に戻って少しグダグダした後、俺は皆にそう言った。
「どうせだから、みんなで入ろうよ! 旅行みたいだしさ!!」
ラルドが、ベッドでゴロゴロと何が面白いのか分からんが、転がりながらそう言った。……全員、ねぇ…。
「…あぁ〜スマン。俺は今から出掛けるから、先に入っててくれ」
俺はそう言って、窓から外の様子を見る。…外は町の明かりがあるから大丈夫そうだな。
「隊長、どこ行くの?」
「…んあぁ、ちょっとな。心配すんな、すぐ帰ってくるからよ!」
ミックの問い掛けに曖昧に返すと、俺は何も持たずに部屋を出た。……桜の下見に行く、なんて言ったら止めるだろうからな。
「…まだ結構いるんだな」
俺は外に出て、桜が見える場所に移動しながらそう思った。結構時間的に遅いはずだが、まだ町の明かりが消えるそぶりは無い。…明日は一大イベントだからな。
「…………おっ?」
ふと、視界に見たことのある姿が映った。…スーツを着こなした耳の長い兎獣人―――メルだ。……どこかに向かってるみたいだが…。
「…宿、ほったらかして良いのか?」
……あいつら、何するか分からんぞ?
俺は少し不安を抱きつつ、メルの後ろをつけることにした。
メルは人通りの多い道を避けるように、裏道や路地を通って行く。……ここまでついて来て、全く気付かれないというのも変だな。
「………ん?」
メルを追って路地を曲がると、メルの姿は無かった。……どこに行っ―――
「―――なっ!! …これは……」
少し暗くてよく分からなかったが、よく目を凝らして見てみると、高い柵で囲まれた広い場所が見えた。……あそこが花見の場所か? 暗くてよく見えんな…。
「…くそっ、ライトアップぐらいしと…け……?」
柵の周りには警備に何人も立っているみたいだった。…そのはずなんだが、なぜか俺の視線の先には、柵の内側で桜を眺めている兎獣人の姿が映っていた。
「……メル…?」
少し分かりづらいが、確かに桜を眺めているのはメルだった。……だが、どうやってあそこに…。
俺がしばらくメルを見ていると、向こうも気が付いたのか俺の方を向いた。………その瞬間
「―――いぃっ!?」
あまりの衝撃に、変な声を出してしまった。
……お、俺を見た瞬間…“消えた”……!?
確かに今さっきまでメルの姿はあった、だがこっちに振り返った瞬間、何も無かったかのように消えた。……マジか…?
「……いや、ちょっと疲れてるんだな。そうだ、違いねぇ。…早く風呂入ろ……」
俺は頭に過ぎった考えを振り払うようにそう言って、宿へと帰った。……メルがいたあの場所、覚えておこう…。