捧げ物
□ギルさんに16000Hitキリリク!
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「―――夕食はいつでもよろしいので!!」
「うぉっ!?」
荷物を部屋に置いていると、突然部屋の扉が開かれてさっきの兎獣人がそう言うと、またすぐに扉を閉めていった。…ノックぐらいしろよ!!
「思ったんだけど、この宿って今の人しかいないんじゃないか? この部屋に来る途中も全く見なかったし…」
近くのベッドに腰掛けたミックがそう言った。……確かに見なかったな。オーナー兼従業員って事か…。
「……部屋は他にもあったみたいだが、客は俺達以外いないみたいだしな。何かあるのかもしれない……」
「…な、何かって…なに……?」
オズワルドの言葉に体をひそかに震わせながら聞くラルド。…部屋はある。見た目は泊まりたくないと思うほど悪い宿でもない。…それなのに誰も客はおらず、従業員は一人だけ…。こりゃあ、出るか…?
「……生物の精神が身体を離脱しさ迷う、精神的マナエネルギー…ですか?」
「…クリス、幽霊って言った方が早くねぇか?」
……ネロ。そのツッコミではいかんぞ。ここは軽く流すべきだったんだ…。
「ネロさん、幽霊というのは正式な名前ではありません。僕の名前がクリスかクリストラルディア・ラナかという大きな違いです。そもそも、幽霊という名前よりももっと分かりやすい―――」
「クリス。俺はどっちでも良いと思うんだが?」
俺は長々と説明し出したクリスの言葉を遮ってそう言った。
「……えっ? あ、ごめんなさい! また長々と……。そうですよね、理解さえ出来れば何だって…」
「そうだな。…精神的マナエネルギーだとちょっと長くて面倒だ」
…まぁ俺にしてみれば、幽霊でも精神的マナエネルギーでも良いんだけどな。
「…もしかすると、この宿で生きてるのは俺達だけなのかもなぁ……」
「ひゃぁ!? ミ、ミ、ミックさん!??」
ラルドのすぐ後ろでそう言うミック。…桜の前に、何の騒動もなけりゃ良いんだが…。
「…あのオーナーも既に……」
「あぁもうやめてよミックさん!! そんな事言ったら、晩ご飯食べたくなくなるじゃん!!」
ラルドはそう言うと、お腹空いたから僕行くよ! と言って部屋を出て行ってしまった。
「ミック…」
「冗談だって〜。俺達も晩ご飯食べに行こ?」
オズワルドにジトッと見られたミックは、笑ってそう言った。……そうだな。
「んじゃ、行くか」
あまりラルドを一人にするのも良くない。
俺はそう言って部屋を出た。……少しネロが震えていたような気がしたが…
「…ネロ」
「な、なんだ…?」
「体調、悪いのか? 少し体が震えてたみたいだが…」
「心配すんな! 俺は幽霊なんて信じてねぇ!!」
………なるほどな。
「早く早く〜!!」
食堂に行くと、既にラルドが料理を食べながら待っていた。…料理が出来るの、早くねぇか?
「ご注文がお決まりになりましたら、申してください」
先程より大分落ち着いた様子のオーナーがラルドの横に立っている。
「…一人で作ったのか?」
オズワルドが料理を見て、オーナーに聞いた。……一人であの短時間に作れるような料理じゃない。やっぱり他にも―――
「はい。……悲しいですが、従業員は私一人ですので…」
オーナーは少し顔を曇らせると、寂しそうにそう言った。
「…あっ、申し遅れました。私、メルと申します。気になる事があれば何なりとお申し付け下さい」
そう言ってオーナー―――メルはにこやかに笑って深くお辞儀をした。