捧げ物
□ギルさんに16000Hitキリリク!
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「…隊長」
「ん? なんだ?」
ワイワイとはしゃぎながら出発の準備を行う俺達。先に準備を済ませたオズワルドが俺に話し掛けた。
「滅多にギルドに行かない隊長が、どうしてチケットを手に入れれたんだ? 隊長がギルドに行くのなんて、見たことなかったんだが……」
…フッ、そんな事か…。
「この季節にチケットが出回るのは知ってたからな。…お前らに少しでも楽しい思い出を作ってやりたくて、結構前から毎日ギルドに出入りしてたんだ」
お前らがまだ起きてない時間帯にな、とオズワルドの頭を撫でながら俺はそう言った。…こうしてると、俺がこいつらの父親になったみてぇだな。……悪くねぇ。
「……だが、何故俺達に隠れてギルドなんかに…」
「そりゃあお前、驚かせるために決まってんだろ」
頭を撫でられ恥ずかしそうに言うオズワルドに、俺は当たり前のようにそう言った。
「……隊長、ありがとう」
「…ばぁか。礼を言われる程の事じゃねぇよ」
俺はそう言ってオズワルドの頭を軽く小突くと、中断していた準備を始めた。……さて、オズワルドにはどんな酒を飲ませてやるかねぇ…。
「………隊長」
「今度はなんだ?」
オズワルドが俺の手元をジッと見ながら、再び口を開いた。
「…隊長の荷物に酒しか入ってないのは、一体どういう事なんだ?」
「花見に酒は必須アイテムだろうが! …俺の分が7本だろ? ネロが2本。そんでオズワルドが3本…」
「―――待て。酒を飲んだことの無い俺がネロより多いのは何故だ?」
…俺としては、一升瓶7本という酒を俺が一人で飲むということを突っ込んで欲しかったんだがな……。
「リョウに着いたら、ひとまず自由行動だ」
ガレールを出てリョウに向かう道中、俺は皆にそう言った。
「なんでですか? 早く見ましょうよぉ!」
「そうしたいが、近くで花見が出来るのは明日だけでな」
駄々をこねるラルドに俺はそう説明する。……それに、リョウに着いてすぐよりも、しっかり宿で休んでからの方がきつくないからな。
「それじゃあ、今日は宿にずっと篭ってた方が良いかな?」
「……なんでだ?」
ミックが楽しみを隠しきれない様子で言った言葉に、オズワルドは不思議そうに首を傾げた。
「だって、もしも外で歩いてる時に桜見ちゃったら、楽しみが無くなっちゃうじゃん!!」
……ミックの言う通り、あまりこいつらを桜の近くに寄らせるわけにはいかないな。俺が下見をしている所を見られちゃ困る。
「…おい、ドルク」
「ん? なんだよ…」
何かを感じ取ったネロが俺に小さな声で話し掛ける。……こいつ、勘は鋭いからな…。
「お前、下見とかするんじゃねぇだろうな……?」
……やっぱりな…。
「……だったらなんだ? こういう時の場所取りは大事だろ?」
「…お前だって、リョウの桜を見るのは初めてだろ? 下見なんかしちまったら、感動も何もねぇだろうが」
……確かにそうかも知れないな。普通に桜を1番の楽しみにしてるんだったら、俺も下見なんてしたくねぇ。
「……違うんだよ、ネロ」
「…何が…」
「確かに下見をしちまったら、近くで見た時の感動はいくらか無くなるかもしれん。…だがな、そんな事よりも俺は、お前らがどれだけ綺麗な桜を見れるかが大事なんだよ。隅っこで桜を見るより、1番綺麗に見える場所で、桜を見せてやりてぇんだ」
俺は後ろの4人に聞こえないように、小さな声でそう言った。……俺がお前らに出来ることなんて、限られてるからな。
「……勝手にしろっ!」
ネロは俺から顔を背けてそう言うと、一人離れて歩き出した。……お前のそういう所、結構好きだぜ。
…実際こんな事ネロに言ったら、問答無用で襲われそうだな、色んな意味で。………いや、それは無いか。せいぜい顔真っ赤にして倒れる程度だな。