捧げ物
□岩頭岩さんに捧げます
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「俺はミルハ。アンタは?」
「セキショウだ」
軽く自己紹介を終え、俺は改めて周りを見回した。……なかなか良い家だな…。俺なんか、ただでさえ狭いっつうのに、フクまでいやがるからな…。
「…物色したりすんなよ。俺ん家じゃねぇんだから」
「…違うのか?」
「この家に住んでるやつらは、今出掛けてる。……まぁいわゆる、留守番を頼まれたっつう事だ」
…まぁ、俺から進んでそう頼んだんだけどな。と雑誌を見て妄想を膨らませながら言うミルハ。……暇だぜ…。
「なぁ、TVゲームとかねぇのか? 暇で暇で仕方ねぇんだがよぉ」
「………てれびげ〜む…? 何だそれ?」
…まさか、TVゲームねぇのか? この世界…。
「画面に繋いで、ピコピコやる機械の事だよ! ……くそ〜、マジでねぇのかよ…」
ミルハのポケ〜っとした顔を見る限り、この世界にはゲームそのものがなさそうだ。…じゃあどうやって暇潰しすりゃあいいんだよ…。
「雑誌、読むか?」
「ぜってぇ〜読まねぇ!!」
……ああ〜早く帰りてぇ〜。あっ、そういえば晩飯まだだったな。
「そろそろ晩飯時じゃねぇか? 腹減ってきたぜ」
「ん〜…確かに。じゃあ今から晩飯作るから待ってろ?」
そう言うと雑誌を置き、立ち上がってキッチンに向かうミルハ。……へぇ〜、料理出来るのか。いかにも、そこら辺のコンビニで適当に買って食べそうな奴だったが。……コンビニくらいはあるよな…?
「ふぃ〜、美味かったぜぇ〜!」
ミルハの飯を食べ終わった俺は、心からそう思った。…こんなに美味い料理は初めてかもなぁ。
「そりゃあ良かった。世界が違うんじゃあ、口に合わないかと心配だったからな」
ミルハは食べ終わった食器を片付けながらそう言った。…見た目もそう変わらなかったし、やっぱり食はどこも変わらないって事だな。
「……あ、寝るとこどうするか? 一応、同じベッドに抱き合って寝ようと思うんだが―――」
「何でだよ!!! 見た感じ部屋ならたくさんあるじゃねぇかよ!!」
…冗談じゃねぇ! なんで異世界に来てまで誰かと同じ布団で寝なきゃならねぇんだよ! そんな事したらオメェ……
「そんな事言ってぇ〜。内心嬉しいんじゃねぇのか? ん?」
「バ、バカかお前!! そそんなことあるわけねぇだろうがよ!!」
…そんな事したらオメェ……照れるじゃねぇかよ…!!
「えぇ〜? んじゃあ、俺がセキショウと一緒に寝たいからってのはどうだ?」
「………ヘッ!! それなら別に、一緒に寝てやっても…いいぜ…?」
そういうことなら仕方ない、俺はミルハの頼みを聞いてやってるんだ、と自分に言い聞かせる。……全く、しょうがない野郎だぜ……。