捧げ物

□ロアさんに捧げます
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「…あぁ、そこそこ…」

俺はネロにマッサージしてもらいながらそう言った。…さっきからネロは黙ったままだ。

「……ネロ―――」
「すまん、ドルク…」

ネロが手を止めて、俺の言葉を遮った。

「…今、俺変な事考えてた…。お前にはそんな気ないのに…」
「…あぁ〜、その、だな…」

ネロは俺が思っていた以上に気にしているようだ。…ネロの顔、見なくてもどんな顔してるか分かる。

「…すまん、ネロ。お前がどんな反応するか気になって、わざと紛らわしい言い方したんだ。…その、あんまり気にすんなよ…」

仕掛けた俺が、なんだか悪い気持ちになった。…だが、ネロがそんなにも気にするヤツだなんて…。

「………く…」
「…ネロ?」
「…くっくっく……!」

俺の上から聞こえてくる含み笑い。…まさかコイツ…!!

「演技か、お前!!」
「いつもやられっぱなしは嫌だからな! …ドルク〜、本気にしてたのかぁ〜?」

そう言って、俺の上で偉そうに高笑いするネロ。…くそっ! ……待てよ?

「けどお前、あんなに顔真っ赤にしてたって事は、実際ドキドキしてたんだよな?」
「うっ!! …そ、それは……!」

俺の言葉で高笑いを止め、再び顔を赤くし始めたネロ。…俺の勝ちだ!

「お前じゃ俺には敵わんっつう事だ!」
「うぉっ!?」

俺は言葉を発すると同時に起き上がった。勿論、俺の上にいたネロは後ろに倒れる。

「いきなり起きるなよ! 危ねぇじゃねぇか!」
「すまん、すまん。今度は俺がマッサージしてやるよ。変な意味じゃなく純粋にな」

俺は後ろを振り返り、ネロにそう言った。ネロは初めはキョトンとしていたが、だんだんと顔をより赤くしていく。

「…お、俺はいい! …その、疲れてねぇから…!!」
「普通のマッサージだぞ? 照れることねぇだろ」

俺は別に、何も意識せずに言っただけだが、ネロは異常なくらい照れている。…俺の事が好きだとしても、これはちょっと反応し過ぎじゃないか?

「…俺にマッサージされるのが、嫌か?」
「嫌じゃない!! …嫌じゃ、ないんだがよ……」

…嫌ではないみたいだな、即答だし。

「じゃあ、嬉しくもない、と?」
「……いや…嬉しい…」

もう俺の事が好きというのを、隠すつもりは無いらしい。

「じゃあ良いじゃねぇか。…俺がお前にマッサージしてぇんだ。いいからやらせろ!」
「ちょ、待て―――!!」

俺は無理矢理ネロを俯せに寝かせて、動けないよう腰辺りに座った。…抵抗しなかったな。ホントはやってほしかったんだろうなぁ〜、コイツ。

「疲れてなくても、案外気持ちいいんだぞ?」
「……勝手にしろ…!」

ネロはここまでされて諦めたのか、全身の力を抜いた。俺はネロの肩に手をやる。

「…ん、結構肩凝ってんじゃねぇかよ」
「……こんなの、お前に比べたらなんて事無い…」

ぶっきらぼうにそう答えたネロ。…鳥人は翼があって余計に疲れるだろう。自分の疲れを、俺に見せたくなかっただけか…。

「お前は強がんなくてもいいんだぞ? 素直に俺に甘えれば良い」
「……そんなこと、出来るかよ。お前は甘えてねぇのに、俺がお前に甘えるわけにはいかねぇ…」

…またコイツは……。

「俺の事は気にすんな。俺の喜びは、お前に甘えてもらえる事だからな」

…ネロが俺に甘えれば、俺はネロが甘えても大丈夫なくらいの雄になっているという事。これほど嬉しい事はない。

「……それでも、俺は…」

余程疲れが溜まっていたのか、それとも気持ち良かったのか両方か知らないが、ネロは今にも眠りそうな声でそう言った。

「………ドルク…」
「ん? どうした」

殆ど寝言と変わらないような声でネロは俺を呼んだ。

「…………zzz」
「寝るなよ、気になるだろうが…」

安らかに寝息を立てるネロの顔を見て、俺の顔が綻ぶ。……まぁ、大体何を言いたいか分かるがな。

「…俺も好きだ、ネロ…」

俺はネロの横に寝転がり、起こさないように気をつけながら抱きしめた。……大好きだからこそ、俺はお前を守ってみせる!
俺は、起きた時のネロの反応を楽しみにしながら、真っ昼間から同じベッドに二人、昼寝を楽しんだ。














―――勿論、帰ってきたミックとラルドに茶化されたのは、言うまでもあるまい。












end
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