捧げ物
□ロアさんに捧げます
2ページ/2ページ
「…あぁ、そこそこ…」
俺はネロにマッサージしてもらいながらそう言った。…さっきからネロは黙ったままだ。
「……ネロ―――」
「すまん、ドルク…」
ネロが手を止めて、俺の言葉を遮った。
「…今、俺変な事考えてた…。お前にはそんな気ないのに…」
「…あぁ〜、その、だな…」
ネロは俺が思っていた以上に気にしているようだ。…ネロの顔、見なくてもどんな顔してるか分かる。
「…すまん、ネロ。お前がどんな反応するか気になって、わざと紛らわしい言い方したんだ。…その、あんまり気にすんなよ…」
仕掛けた俺が、なんだか悪い気持ちになった。…だが、ネロがそんなにも気にするヤツだなんて…。
「………く…」
「…ネロ?」
「…くっくっく……!」
俺の上から聞こえてくる含み笑い。…まさかコイツ…!!
「演技か、お前!!」
「いつもやられっぱなしは嫌だからな! …ドルク〜、本気にしてたのかぁ〜?」
そう言って、俺の上で偉そうに高笑いするネロ。…くそっ! ……待てよ?
「けどお前、あんなに顔真っ赤にしてたって事は、実際ドキドキしてたんだよな?」
「うっ!! …そ、それは……!」
俺の言葉で高笑いを止め、再び顔を赤くし始めたネロ。…俺の勝ちだ!
「お前じゃ俺には敵わんっつう事だ!」
「うぉっ!?」
俺は言葉を発すると同時に起き上がった。勿論、俺の上にいたネロは後ろに倒れる。
「いきなり起きるなよ! 危ねぇじゃねぇか!」
「すまん、すまん。今度は俺がマッサージしてやるよ。変な意味じゃなく純粋にな」
俺は後ろを振り返り、ネロにそう言った。ネロは初めはキョトンとしていたが、だんだんと顔をより赤くしていく。
「…お、俺はいい! …その、疲れてねぇから…!!」
「普通のマッサージだぞ? 照れることねぇだろ」
俺は別に、何も意識せずに言っただけだが、ネロは異常なくらい照れている。…俺の事が好きだとしても、これはちょっと反応し過ぎじゃないか?
「…俺にマッサージされるのが、嫌か?」
「嫌じゃない!! …嫌じゃ、ないんだがよ……」
…嫌ではないみたいだな、即答だし。
「じゃあ、嬉しくもない、と?」
「……いや…嬉しい…」
もう俺の事が好きというのを、隠すつもりは無いらしい。
「じゃあ良いじゃねぇか。…俺がお前にマッサージしてぇんだ。いいからやらせろ!」
「ちょ、待て―――!!」
俺は無理矢理ネロを俯せに寝かせて、動けないよう腰辺りに座った。…抵抗しなかったな。ホントはやってほしかったんだろうなぁ〜、コイツ。
「疲れてなくても、案外気持ちいいんだぞ?」
「……勝手にしろ…!」
ネロはここまでされて諦めたのか、全身の力を抜いた。俺はネロの肩に手をやる。
「…ん、結構肩凝ってんじゃねぇかよ」
「……こんなの、お前に比べたらなんて事無い…」
ぶっきらぼうにそう答えたネロ。…鳥人は翼があって余計に疲れるだろう。自分の疲れを、俺に見せたくなかっただけか…。
「お前は強がんなくてもいいんだぞ? 素直に俺に甘えれば良い」
「……そんなこと、出来るかよ。お前は甘えてねぇのに、俺がお前に甘えるわけにはいかねぇ…」
…またコイツは……。
「俺の事は気にすんな。俺の喜びは、お前に甘えてもらえる事だからな」
…ネロが俺に甘えれば、俺はネロが甘えても大丈夫なくらいの雄になっているという事。これほど嬉しい事はない。
「……それでも、俺は…」
余程疲れが溜まっていたのか、それとも気持ち良かったのか両方か知らないが、ネロは今にも眠りそうな声でそう言った。
「………ドルク…」
「ん? どうした」
殆ど寝言と変わらないような声でネロは俺を呼んだ。
「…………zzz」
「寝るなよ、気になるだろうが…」
安らかに寝息を立てるネロの顔を見て、俺の顔が綻ぶ。……まぁ、大体何を言いたいか分かるがな。
「…俺も好きだ、ネロ…」
俺はネロの横に寝転がり、起こさないように気をつけながら抱きしめた。……大好きだからこそ、俺はお前を守ってみせる!
俺は、起きた時のネロの反応を楽しみにしながら、真っ昼間から同じベッドに二人、昼寝を楽しんだ。
―――勿論、帰ってきたミックとラルドに茶化されたのは、言うまでもあるまい。
end