捧げ物
□フォルさんに捧げます
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「……クラフトさん、どこに行くんですか?」
私は半の手を引きながら目的の場所に向かう。まだ朝方というのもあって人の通りは少ないが“あそこ”は朝でも人は多いだろうな。
「……クラフトさん!」
「ん? なんだ?」
半が私の前に出てきて私の顔を見る。やはり何も教えられない事に少し怒ってるみたいだ。……怒ってる半も可愛いな。
「もうどこに行くのか教えてくれたって良いでしょ!?」
頬を膨らませて腰に手を充てる半。……くぅ〜、可愛いぞ!!
「…そうだな。わかった」
そう言って私は半の肩に手を置く。…そう、その目的の場所は目に見える距離まで近付いていた。私は半を振り返るよう促す。
「………わぁ〜〜!!」
半が、少し遠くに見えるその場所の象徴とも言える物を見て歓喜の声をあげる。……どうやら作戦は成功しそうだ。
「クラフトさん! あれって!!」
「最近オープンしたらしいぞ? 前から半と行ってみたいと思っていたんだ」
そう言うとさっきの表情が嘘のように消えて、今度は半から私の手を握って走った。最近オープンした“遊園地”へと。
「大人一枚と子供一枚ください」
私は入場口で犬獣人の係員にそう言って、私と半の分の一日フリーパスと遊園地内のマップを貰う。
「ごゆっくりどうぞ〜」
係員のそんな気の抜けた声で見送られながら、私と半は遊園地の中に入った。
「半、最初はどこに行くか?」
私はマップを広げながら言った。アトラクションは沢山の種類があって、もしかしたら一日では廻りきれないかもしれないぐらいに多かった。
「ん〜…そうだなぁ。……コレ!!」
そう言って指差したのはお化け屋敷だった。小さく説明書きがされていて、『恐怖の世界にあなたを誘う』と書かれてあった。
「半〜、大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫だよ…!」
少し声が震えながら言う半が可愛くて、私は半の頭を撫でながらそのお化け屋敷がある場所に向かった。
「…2名様でよろしいですね?」
お化け屋敷入口の所で、それらしい格好をした狐獣人が言った。
「……この屋敷では昔、愛し合っていた猫獣人と狼獣人の二人が住んでいました。毎日を楽しく暮らしていたそうです。……しかし!! ……ある日を境に狼獣人の様子がおかしくなり、その猫獣人を自らの手で殺してしまったのです!! 一体彼に何があったのか!? ……それを探って来てほしいのです……」
「………」
…実に興味深い話だ。何故愛し合っていたはずの彼らは、こんな悲しい運命を辿ることとなったのだろうか。勿論お化け屋敷として楽しむために来たのだが、今の話を聞くと真相が知りたくてしょうがない。……半は今の話を聞いて少し震えていた。
「……では、真相をその目で確かめて来てください……」
係員の狐獣人は屋敷の中へ通じる扉を開けた。
「……半、大丈夫か?」
「…うん、大丈夫! ちょっと怖いけど真相が気になるしね!」
……どうやら私と同じ事を考えていたようだ。私は苦笑して、半の手を取りながら中に入っていった。