虚ろなる世界で…

□虚ろなる世界で…[参]
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「ハンスさんっ!! アルフさんっ!!!」

突然、部屋にナユタが入ってきた。見るからに焦ってるけど、どうしたんだ?

「…このニオイ……じゃなくて!! レンさんが……」
「レンがどうかしたかの?」
「…レンさんが、どこにもいないんです!!」

…どこにもいない……? どこにもいないって……!!

「アフターエイジにいないの!?」
「…うん。さっき晩御飯を呼びに行ったら誰もいなくて……。ルーと二人で探したけど、どこにも……」
「…ワシのせいじゃ……。ワシは探しに行くゾイ!!」

今にも全速力で飛び出しそうなハンス。しかし、ナユタがそれを全力で止めた。

「もう外は暗いから危ないですっ!!」
「ワシがあやつを追い込んだのじゃぞ!? 危険なのはレンも同じじゃ!!」
「―――止めておけ。お前が行っても逆効果だ」

ナユタの後ろから、クロードがゆっくり歩いて来て、ハンスにそう告げる。

「………アイツがなぜ出て行ったか、分かっているんだろう?」
「………しかし……ッ!!」

……レンが出て行った理由?

「レンはハンスと喧嘩して、居心地が悪くなったのか……」
「………本気でそう言ってるのか?」
「えっ? 違うの?」
「……………」

…ダメだ。全く分からない。

「…ちょっと待ってみようよ、ハンス。すぐ帰ってくるかもしれないし」
「……分かった…」

ハンスは俺の言葉に渋々といった様子で頷く。…俺も探しに行きたいけど、腰が痛いしね。

「……ところで、何でアルフさんはハンスさんの背中に…?」
「あぁ。ハンスが―――」
「ばばばば晩飯を、た…食べるゾイ!? のぉ、アルフ!!」
「…それもそうだな」

…昼から食べてないからなぁ……。確かにお腹空いた。

「…ごめんな、ナユタ。昼飯せっかく作ってくれたのに食べれなくて……」
「そ、そんな、気にしないで!? ルーと俺で美味しく食べたから!!」
「…それなら良いけど。レンもどうせすぐ帰ってくるだろうし、先に食べよっか」

……帰ってきたら説教してやろうかな? でも、喧嘩じゃなかったらなんでレンは……。














「………帰って来ないね、レン兄…」

みんな晩御飯を食べ終わって玄関で待ってみたが、レンは帰って来なかった。……すぐ帰ってくると思ってたのに…。

「…どこに行ったんだよ…」

俺は暗くなった外を見つめながら呟く。…“アレ”もたくさんいるだろうし、一人で寂しいはず。

「……俺、探しに行く」
「………やめておけ。怪我で済まないかもしれんぞ」
「それなら尚更だよ! レンが危ない!!」

俺を止めるクロードにそう言ったが、クロードは俺の言葉を無視して玄関の扉に手をかける。

「………お前はここで待っていろ。俺が探してきてやる」
「……クロード…」

クロードはこっちを向かずに俺達にそう言った。……クロードが俺達の為に…。
俺はアフターエイジを出て行こうとするクロードの手を掴んで止めた。

「…………なんだ」
「1人じゃ危ないよ」
「………俺の心配はいらん」
「ダメ」

クロードはそれから何も言わず、扉から手を離して深いため息をついた。

「…でも、レンさんが帰ってきた時に誰もいなかったら困る…よね?」
「そうだね。誰か残っとかないと…」

ナユタの意見に俺達は頷く。……レンが帰ってきた時誰もいなかったら、レンがまたどっか行くかもしれないしな。
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