僕らの世界
□僕らの世界-14-
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(オズワルド)
「……遠い道程だな」
朝、ラージェンを出発した俺達。ここからナルガムまで行くのに、どれだけの日数がかかるんだろうか。
「ダランまで行くのに2、3日。船で渡ってガレールまで行くのに2、3日。汽車に乗ってガーランズまで行ってそこからナルガムまで1日。…早くても5日はかかりますね」
手持ちの地図を見ながらクリスがそう説明した。…5日か。準備が整っているだけに、焦ってしまうな。
「…こう、バビューンと行ける便利な物はねぇのかよ?」
「そんな物、あったら使ってるよ」
カンタルの言葉に呆れながらミックがそう返した。
―――おぉぉぉぉぃ!!
「………?」
突然、どこからか声が聞こえてきた。俺達は立ち止まり辺りを見回すが、どこにもそれらしき人影は見当たらない。そうしていると、俺達を照らしていた陽の光が何かに隠れた。何事かと空を見上げる。
「……なんだ、あれは…」
俺達の頭上には逆光で良く見えないが、大きな何かがいた。俺達は俺達はそこから少し離れ、戦闘体制に入る。
降りてきたのは、銀色の龍だった。何十メートルもありそうな大きく長い胴体に、太い手足。立派な鬣と角を持った龍。その龍は俺達の近くに降りた瞬間、光となって消え去った。消えた辺りには今の龍に乗ってきただろう2人の獣人。
「久しぶり! 元気にしてた?」
こちらに走り寄ってきた2人を見て、俺達はすぐに解放していた魔導兵器を戻した。
「アダジオ! レント!!」
「心配かけてゴメンね」
2人の獣人はアダジオとレントだった。…2人が無事ということは……。
「伯父さんは!?」
「…一応、無事だよ」
「……どういうことですか?」
レントは視線を落とし呟くように言った。
「あの時のルーラァは、君達じゃなくてカイン様が狙いだったらしいんだ。俺達じゃあカイン様を守りきれなくて……。表面的な怪我は俺の血識で何とかなったけど、満足に動けるかどうか……」
「…お前らの隊長が体を取り戻すのを遅れていたら、もう駄目だった」
アダジオがその場に座り込んで、その時を思い出すかのようにそう言った。
「……誰だっけ?」
ラルドは少し苦笑いしながら、俺にそう聞いてきた。…そうか。俺とクリス以外は依頼でベルザラントに行ってから会ってないんだな。
「俺の伯父さんに仕えてる人だ。俺とクリスは世話になった」
「んで? 何の用事があって来たんだ?」
ネロは腕を組んで少し苛立ち気にそう言う。…急いでいるんだ。ネロが苛立つのも無理はない。
「カイン様に君達の手伝いをするよう頼まれたんだ」
「……カイン様をお守りしたかったが、カイン様本人がそう言うんだから仕方ない…」
…一度狙われたんだ。またルーラァに狙われてもおかしくない。ろくに動けない伯父さんの近くに誰もいないのは、2人にとって安心出来ることじゃないだろうな。
「今更カイン様のとこに戻っても怒られるだけだから、帰れとか言わないでね?」
「…分かった」
……伯父さんなら怒るだけじゃ済まなそうだ。
「ところで、さっきの龍は何?」
ミックが話を変えるようにレントに聞いた。
「あれは俺達の魔導兵器だよ」
「あれも魔導兵器なの!?」
「“フギン・ムニン”って言って、2つで1つの魔導兵器さ!」
少し得意げに話すレント。…そういえば、さっきからアダジオはきつそうにしているが…。
「…“フギン・ムニン”は、レントの魔導兵器“ムニン”に俺の魔導兵器“フギン”で魔力を与えることによって動き出す魔導兵器だ」
「つまり、魔力を消費するのはアダジオだけってこと。君達を探すのにたくさん魔力を使ったから、ちょっと休ませてあげて」
……そういうことだったのか。
「色んな魔導兵器があるんですね」
「俺達のは特別製だけどね。まだカイン様とゼクリアにいた時に作ってもらったんだ」
「…そんな簡単に作れるのか…」
「どうだろうね? 作っているのはゼクリアの王だし、俺達は製造過程を見てないから分からないなぁ」
…俺達は魔導兵器に助けられているし、感謝すべきなんだろうか?