捧げ物

□ロアさんに捧げます
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(ドルク)





「おぅ、行ってこい!」

俺は部屋のベッドに寝転がりながらそう言った。

「…隊長は行かないのか?」

目の前で依頼書を持って立ち尽くしているオズワルドがそう言った。
なんでも、最近暇だという事で冒険者ギルドから依頼を持ってきたらしい。…まぁ、確かに暇だったが…。

「今日は俺、そんな気分じゃないんだなぁ、これが。…つーわけで、しっかり暇潰してこい」

…ん〜、今日は大家族のお手伝いをするよりも、家でダラダラする気分なんだよな。

「………」

オズワルドは少しの間俺を見ると、部屋から出ていった。……さ〜て、俺一人で何すっかなぁ…。

「―――おいコラ!!」
「…あぁ?」

オズワルドが出ていって少ししてから、突然ネロが部屋に入ってきた。

「お前は行かねぇのか?」
「それはこっちのセリフだ! 何グータラしてんだよ!」

起きやがれ、アホ!! と言いながら俺を足蹴にするネロ。俺は仕方なく起き上がった。

「俺は今ダラダラしたい気分なんだ。分かるか?」
「知るか!! 良いからお前も来るんだよ!!」

俺の顔の前で両手を叩くネロ。…そんな事されなくたって、目覚めはバッチリだ。

「……ほぅ〜?」
「…な、なんだよ…」

俺は、ネロの行動の理由に思い当たる節を見つけ、目を細めた。ついでに口元がにやける。

「…お前は俺が近くにいないと嫌なんだな?」
「―――なっ!! バ、バカ!! ちげぇよ!!」

おかしいくらいに慌てるネロ。……コイツ、嘘が下手にもほどがあるだろ…。

「あぁ〜、10分以上視界に俺がいないと落ち着かないんだな?」
「ふざけんな! そんなに早くねぇよ!!」

…待て。そんなにって事は、少なからず俺が視界に入ってない時間が続くと落ち着かないんだな?

「じゃあ30分くらいか?」
「…おっ………ち、ちげぇよ! 別にお前が視界に入ってなくてもなぁ!!」

30分くらいか…。

「…あ〜、でもなぁ…。正直言うと、俺やることがあるんだよ」

俺はネロから視線を外し、そう言った。勿論、やることっていうのは、家で暇潰すって事だ。

「…そうなのか?」
「あぁ。…というわけだ。お前も行ってこい」

この後のネロのセリフを考えながら、俺はそう言った。……大体予想はつく。

「……それなら、俺も手伝ってやるよ!」
「…そうか? 助かるぜ」

予想通りの返答をしたネロ。……コイツ、分かりやすいな…。

「んで、何すんだ?」

…そうだな、どうやって暇潰しするか…。

「………おっ、そうだそうだ」

俺は良いことを思いついた。…これなら、“一日中楽しめる”…。

「…ネロ……」

俺は立ち上がって、軽くネロの肩を掴んだ。

「…な、なんだよ…」

いつもと違う俺の反応に戸惑っているネロ。俺は肩の手を徐々に下へと下げていく…。

「…俺を、“気持ち良く”してくれないか……?」
「んなっ!? 何言って―――うぉっ!?」

腰辺りまできた手でネロをがっちり掴み、一緒にベッドに倒れ込んだ。スプリングの効いたベッドがギシギシなる。…俺のすぐ目の前にはネロの顔…。

「…頼む、ネロ…」

俺はネロを掴んだ状態でベッドの上を転がり、俺が下、ネロが上の状態にした。ネロの手が、俺の顔の横にあり、ここだけ見ればネロが俺を押し倒したようにも見える。

「…お、俺は、その…いや、こういうのは…だな…」

ネロは逸らした顔を真っ赤にして、嘴をパクパクさせながら言う。…くっくっく…! 良い具合に“勘違い”してるな…。

「…今ここには、俺と…お前しかいない…。俺を気持ち良くしてくれるのは、お前しかいないんだよ…。頼む…」

俺はネロの目を見てそう言った。ネロは逸らしていた顔をまっすぐ俺に向け、ゴクリと生唾を飲んだ。

「…ほ、本当に良いのか…?」

ネロの手が俺の肩をがっしりと掴んだ。

「あぁ、最近肩が凝っててな。それと腰もだな。…いやぁ、助かるぜ。毎日筋トレするのは良いが、もう30だからなぁ。んじゃ、最初は肩から“気持ち良く”してくれ」

俺は笑顔でネロに向かってそう言うと、俯せになった。……さて、どういった反応するか…

「…………」
「……ネロ?」

なかなか動かないネロが気になり、俺は顔だけを動かしてネロを見た。

「…あぁ、スマン。肩からだったな…」
「あ、あぁ…頼む…」

ネロの顔は今まで見たことないくらいに残念そうな顔をしていた。……くそ、なんだよ。そんな顔されたら、俺が困るだろうが……。
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