捧げ物

□フォルさんに捧げます
1ページ/4ページ

(クラフト)





「……ん、ん〜…」

目が覚めた。私の目の前には半の顔があった。…それもそうだ。昨日は二人抱き合って寝たのだから。
私は半を起こさないように立ち上がり、顔を洗いに洗面所に向かう。蛇口を捻り水を出す。手で掬って顔を水で洗う。冷たい水が眠気を無くしてくれた。そんな毎朝の動きを終えて、朝食の準備に取り掛かった。

「―――いや、離れたく、ない……!!」
「……? 半?」

唐突に半の声が聞こえた。私は半が寝ている布団を見てみる。しかし半はまだ寝ていた。…どうやら寝言らしいな。それにしても一体どんな夢を…。

「……いや、クラフトさん…!!」
「――半、起きろ!」

半はうっすらと目に涙を溜めていた。様子がおかしい半を起こそうと、半の体を揺すってみる。

「……ん〜…!! クラフトさん!!」

半は、目が覚めると同時に私に抱き着いてきた。私は半の背中を優しく摩ってやる。

「…うぅ、クラフトさぁん!」
「大丈夫だ。私はここにいるから」

少しの間私と半はずっとその状態でいた。半が落ち着くまで続けた後、半に事情を聞いてみた。

「……怖い、夢を見たんです…」
「……夢?」

それから半はゆっくりとその夢の内容を話してくれた。……目が覚めると、誰もいないらしい。私も、サザも、ベルデンも……。街には半が一人だけで、そのうちみんな帰ってくるが、またすぐに消えている、という夢らしい。

「……僕、クラフトさんと離れたくない! サザさんとも、ベルデンさんとも…!!」
「あぁ、大丈夫だ。私はずっと半の側にいるから」

私は半の頭を撫でてから、半を洗面所まで連れていった。私は出来上がった朝食を皿に盛りつけてすぐ食べれるようにしておく。顔を洗ってきた半が戻ってきた。

「いただきます」
「…いただきます」

私と半は揃って朝食を食べ始める。……しかし、半は元気が無いように見える。まだ夢の事が気になるのだろう。

「…半。夢の事なんだから気にするほどでも無いだろう?」
「……うん…」

それでも少し気になるみたいだ。……どうしたら半は元気になってくれるだろうか。

「………そうだ! 半、早く食べ終わるんだ!」
「えっ? どうしたの!?」

私は一気に朝食を口の中に掻き込み、水を一杯飲んだ。

「半、出掛けるぞ!!」

私は精一杯の笑顔でそう言った。半は未だに状況を掴めていないみたいだが、とりあえず朝食を早く食べ終わり、支度をし始めた。私も服を着替えて支度を済ませる。

「クラフトさん、どこに行くんですか?」

支度を済ませた半が聞いてきた。

「……それは、着いてからのお楽しみだ!」

私はこれから半と行く所に心を躍らせながら、半の手を引いて家を出た。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ