捧げ物

□白狼さんに捧げます
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(クーリエ)





「………」

俺達はあの遺跡を出て、王国を目指した。……本来なら一人旅のはずなんだが…。

「王国! 王国! …ふふふん!」

俺の少し前を歩いている黒い猫獣人。俺の目的からしてみれば、その耳のピアスにだけ用があったのだが、30分間も頼み込まれればこちらが折れるしかない。あそこで断ってもひたすら懇願してきそうだった。

「歩こう〜! 歩こう〜! 私は〜元気ぃ〜!!」
「……すぐ疲れるぞ」

ロシェットはいきなり歌を歌い出した。俺は後ろから注意を促すが、特に気にしてはないようだ。

「平気平気! ………へへっ」
「……どうした」

いきなり振り向いたかと思うと、ロシェットは俺を見て笑った。

「クーリエって白いね」
「……それがどうした」

するとロシェットは歩みを止めて、俺の隣に並んだ。今、俺の横にロシェットがいる。

「僕は黒、クーリエは白。……なんかいいね!」
「…何がいいんだ?」

だが、俺の質問には答えず、ロシェットは俺の隣で鼻歌を口ずさんでいる。……こういう旅もなかなか良いかもしれない。

「……ロシェット。あそこの遺跡で何をしていたんだ?」

俺は気になって聞いてみた。

「あぁ、あの遺跡には何か高く売れそうな物を探しにきてたんだ。そしたらこのピアスが出てきて…」

ロシェットは自分の手でピアスをいじっている。……あのピアスが俺の本来の目的。あのピアスが、だ。決してそれを身につけているロシェットではない……はずなんだが、ロシェットの顔を見ると、少しだけ俺の顔が綻んだような気がした。勿論、自分の顔を確認出来ないのでわからないが。
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