捧げ物
□キバトリさんに捧げます
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(零次)
「……あぁ、だるい」
朝の目覚めは最悪だった。起きると頭がガンガンする。自分で額を触ってみると熱い。……風邪を引いたみたいだ。
「……だが、学校を休むわけにはいかないな…」
これまで遅刻はあったものの、欠席は……まぁ、一度あったが……意地でもしたくはなかった。俺はとりあえずベッドから起き上がり、部屋のドアに手をかける。すると、自然にドアノブが回った。そのまま扉が開かれ、俺は前に体重をかけたまま対処しきれず前に倒れそうになる。
ボフッ
俺はそのまま親父の胸に頭を埋める形になってしまった。
「……!! …零次、やっとお前もそういう気になったのか。お父さんは嬉しいぞ!!」
…勘違いも甚だしい。ガバッと親父の腕は俺を抱きしめようとする。俺はそれを避けるために親父の体を前に突き倒す。
「……零次、学校があるんだぞ? 朝からそんな…」
「………はぁ…」
風邪による頭痛もあり、親父の意味不明な行動に突っ込む気も失せた。
「……どうした零次? 元気がないな。風邪か?」
「…大丈夫。ちゃんと学校には行く」
立ち上がり俺の額に手を添えてくる親父を無視して階段を降りる。
「熱があるみたいだから学校は休んだ方がいいんじゃないか?」
親父は階段を降りながら俺にそう言う。
「……これくらい何て事無い」
そう言ってはみるものの、少しきつかった。勿論無理して学校に行く理由も無い。
「そうか、そんなにも天光君に会いたいのか」
親父は一人腕を組んで、わざとらしくうんうんと頷いている。
「……何でそうなる」
「…何でって、お前が父さんの息子で、天光君が冬人の息子だからだろう」
……わけが分からない。天光が冬人さんの息子だから何なんだ。
「そうか…。零次ももうそんな歳になったのか…。……うんうん」
「…ああ、もう学校休めばいいんだろ! 休めば!!」
さっきからそんな事を言っている親父があまりにもウザかった為、仕方なく休むことにした。
「―――なに? 零次、学校休むの?」
階段の下から心配そうにおたまを持ったまま母さんが言った。
「……ちょっと風邪っぽいから…」
「……そう。なら学校に連絡入れとくわね」
そう言うとまた母さんは戻っていった。すると突然、後ろから親父に抱き着かれる。
「今日は零次とずっと一緒だぞ〜!」
「…ああ〜もうウザったい!!」
頬を擦り寄ってくる親父を突き放し、俺は朝食を取ることにした。