dream
□HELLO-HELLO
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「…!お、はよ…」
「はよ」
寒さが肌に刺さり、空気が凍てつく朝。
まだ眼が覚めきらないまま玄関のドアを開けたら彼はいた。
マフラーに顔を半分うずめて寒そうに立っていた。
「どーし、たの?」
いつもなら朝練という名目で朝に顔を合わせる事は滅多にない。
クラスも違うから校内で顔を合わすこともほとんどない彼が何故か今目の前にいる。
「別に」
「あぁ…そう」
「早くしてよ。寒いんだけど」
鼻の頭まで赤くしてるリョーマがなんだか凄く可愛く見えて自然に顔が緩んでいた。
ふふ、と笑うと不満そうに何?とだけ言って並んで歩く。
徐々に温度が上がり始めてる空気と、さっきまで隠れていた日差しとがあたしの体温に拍車をかけた。
常にあたしの半歩前をゆくリョーマは少し早歩き。
「…リョーマ、背伸びた?」
しばらく2人で歩くなんて事はしていなかったし向き合うことも少なかったから違いには早く気付いたと思う。
でもリョーマには不満だったみたいだ。
「前から伸びてる」
そういってリョーマは少し歩くペースを速めるけど、あたしはすぐに追いついてしまった。
…あ。
そっか、まだあたしの方が背高いから歩幅広いんだ。
同じペースで歩こうとするとリョーマはどうしても早歩きになる。
ちらっとリョーマを見るとまた、何、て感じの顔で睨まれた。
まっすぐ前を見すえて、しっかりとした一歩を踏み出して。
あたしの知らないリョーマの一面は部活に入ってからどんどん増えている。