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□*漆黒の悪魔(黒4D3V)
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今宵も黒い悪魔が舞い降りる。

夜に浮かぶ月と同じ赤を瞳にたたえて。


【漆黒の悪魔】


生暖かい風が頬を撫でる。
バージルは円卓状の闘技場で次々と現れる悪魔を切って退けて行った。
「…雑魚と遊びに来たわけではない。さっさと姿を現したらどうだ」
最上階にたどり着くと、誰もいない広い場内に呼び掛けた。
すると、暫くして聞き慣れた笑い声が響き渡った。
「じゃぁわざわざ俺に逢いに来てくれたってのか?嬉しいねぇ」
「…!」
突如背後に気配を感じとっさに身を翻すと、轟音と地面に亀裂が走った。
見ればその先に、見慣れた剣。

「待ってたぜ…『お兄ちゃん』」

妙に色気のある低い声。
自分と同じ銀色の髪。
よく似た容姿。
違うのは、漆黒の衣を纏っていることと、血を塗ったような瞳の色。

「……ダンテ…」

正しくは彼の『影』だ。
ただ、バージルが知る彼よりもずっと歳を重ねているその姿は、弟と呼ぶよりは父に近しい。

「相変わらず美人だなぁ。また逢えるなんて嬉しいぜ」
赤い舌をちろりと覗かせて、漆黒のダンテがにじり寄る。
殺気ではないが、凄い威圧感を身体に感じ、バージルは一歩退いた。
「…貴様は俺が知るダンテではない。何者だ」
閻魔刀の切っ先を彼に向けそう問えば、高い笑い声が返ってきた。
「俺は俺だよ。ただ、『時が止まった』アンタとは違ってちょっとばっかし歳とっただけさ」
「…時が…止まった?」
「まぁいいじゃねぇか。久々の兄弟再会だ。…楽しもうぜ」
そう言い終わると同時に、漆黒のダンテはリベリオンを振り下ろした。

轟音を立て床に亀裂が走る。

バージルは紙一重でその剣圧をかわすと、幻影剣を彼に向かって放った。

「またアンタとこうして遊べるなんて夢にも思わなかったぜ、バージル」
さも楽しそうに言いながら、漆黒のダンテは幻影剣を横転してかわす。
「…なぜ、貴様がここにいる」
血塗られた城…その名が示すように、この円卓競技場は残酷な殺し合いをする場所。
その最上階に君臨する彼は、最も強く……最も残酷だということ。
バージルには分からなかった。
自分が知るダンテは、自分よりずっと人間に近く、何より悪魔を憎んでいた。

…なのに…

「バージルが来るのを待ってたんだよ」
「何…?……っ!?」
一瞬の隙をついて、一気にバージルとの距離を詰めた漆黒のダンテは、凍るような笑みを浮かべたまま、バージルを押し倒した。

カランッ

閻魔刀がバージルの手から滑り落ちる。
「…オレ、強くなっただろ?前ならアンタにこうして見下されてばっかだった」
バージルの両腕を彼の頭の上で一くくりにすると、片方の手で彼の服を脱がしにかかった。
「!貴様何を…っ!?」
「十年以上待ってたんだ。久しぶりに楽しもうぜ、『お兄ちゃん』」
「離せ…っ!」
十年、という時が本当に経っていたからか、必死で抵抗を試みるが、ダンテは片手だけでそれを阻む。

「相変わらず白い肌してンな」

あらわになった肌を見、舌なめずりをする漆黒のダンテから視線を外そうとすれば、顎を掴まれ無理矢理顔を合わせられた。
「…っ!」
「オレはアンタが知ってるダンテみたいに優しくしないぜ」
「何…だって…?」

……嫌な予感。

冷たい微笑を浮かべたまま、漆黒のダンテが急に背にかけてあったリベリオンを抜いた。

……ああ、そうか。

バージルは自嘲気味に笑い、瞼を閉じた。
…次の瞬間、鈍い痛みが彼の身体を襲った。
「ぐ、は…ッ!」
真っ赤な血が飛び散り、目の前の漆黒のダンテの頬を汚す。
「アンタには真っ赤な血がよく似合う…なぁ、バージル」
嬉しそうに言い、漆黒のダンテは刀を引き抜く。「は…ぁ、貴様…何、で…ッ」
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