Main

□1/2(3DV)
1ページ/1ページ

小さい頃から、何でも『半分』が当たり前だった。
食べ物も、親からの愛も、悪魔の力も。

ただひとつ、半分でないもの。



【1/2】


「おい、これは何だ」
弟が下げているスーパーのビニールを指差して尋ねると、
「チェリーパイにチョコレートだろ?それから…」
がさごそと袋の中を漁りながら、予想通りの言葉を並べられた。
バージルは呆れ返ってため息をつき、次の言葉を遮った。
「もういい。それを買えと誰が言った?」
「オレの腹」
「……今すぐ返してこい」
「えー!?何でだよっ!ここ1週間甘いモン食ってないんだぜ!?」
「甘い物など一生食わなくても死なん」
そう言い捨てて、ぶーたれるダンテから甘い物がつまったビニール袋を取り上げる。
本来なら、食べ物の嗜好も似るはずなのだろうが、弟の甘い物に対する執着はバージルも理解し難いものがあった。

「もう少し食生活を改善しようとは思わないのか?そもそも貴様にそんな無駄金があるようには……?」
ぶつぶつ言いながら、先を歩いていたバージルだが、ふと、自分のコートの裾を掴まれていることに気付いて立ち止まる。
振り返ってから、しまったと思った。

「…パイ、食いたかったなぁ…」
下を向いたままぽつり、と呟くダンテ。
その姿が、昔の小さな頃の彼と重なって見えた。
…こうなってはお手上げだ。
とりあえず図体だけはデカイ弟の手をコートから引きはがすと、
「…仕方ない、一つだけだぞ」
そう言ってチェリーパイをダンテの手に預け、残りを店に返しに走って行った。
「…一つだけって…ケチだなぁ」
愚痴ってはみるが、この『一つ』の意味もわかっているからダンテも嬉しかった。

いつだって兄とは、『半分』だったから。
…きっとこのパイもそうなるのだろう。

「けどまぁ、バージルは独り占めできてるだけ、オレは幸せ者なのかな…」

店から颯爽と出て来る兄を見て、愚弟は満足げに微笑った。



end...

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ