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□独裁(3DV)
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「な…何するんだ貴様!」
「…バージルとすンの」
「するって……」
「セックスに決まってンだろ」

とんでもない、緊急事態だ。


【独裁】


原因は夜に飲んだアルコール。
自称ザルのダンテが、仕事後の疲れのせいか、瓶一本でダウンしたのだ。
仕方なく、バージルがそんな愚弟をバーから引きずりながら事務所まで帰って来たときだった。
「…!?」
急に後ろから抱きしめられて、バージルの身体は束縛された。
「……ばぁじるーぅ…」
酔っ払ったダンテの呂律はかなり危うい。
酒の匂いにバージルは露骨に嫌な顔をした。
「早くその酒臭いのをどうにかしろ。というか、うでを離せ」
このままじゃ何も出来ない、と半ばイラついた口調で背後の弟に言い放つが、彼は聞く耳持たず。
「……バージルこそ、匂うんだけど」
「は?」
何を言い出すかと思えば、ダンテはバージルの頚元に顔を埋めて、くんっと鼻を動かした。
「……バージルのじゃない、匂いがせる…」
その言葉に思い当たる節を見つけたのか、バージルは珍しく焦った様子で拘束を解こうと抵抗し出した。
「オレ以外の誰の匂いがせるというんだ!離せ馬鹿っ」
「…オンナの香水、匂うんだよ」
「…っ!」
香水などつけないはずのバージルから僅かに香るのは、嗅いだことのある香水の匂い。

……それは…

「……レディの…?」
黒髪の女デビルハンターの愛用品だった。
彼女の名前を口にすると、バツが悪そうなかおをしたので、ダンテは苛立ちを抑え切れなくなった。
「…ちょっ…!?」
急にダンテの片手が自分の服を捲り上げようとしてきたので、さすがのバージルも素っ頓狂な声を上げてしまった。
「馬鹿!何をするっ、離せ!」
「や」
一言で拒否すると、ダンテはその熱を持った手を自分よりも華奢な身体に這わせた。
途端、跳ね上がるその敏感な身体。顔が見えなくてもわかる。
「…ッ…やめ、…!」
その顔は真っ赤になっていて、
「嫌だ」
「…ぁっ」
抑え切れない声に、自分に、羞恥してるってこと。

…プライドの高いアンタだからこそ、独り占めしたいんだよ…

我ながら中毒だな、と嘲笑い、ダンテは抵抗の弱くなった兄を組み敷いた。

***

「レディとは貴様が放棄した仕事で居合わせたんだ」
「…へ?」
横になったまま、やたら[放棄]を強調して言い出したバージルに、今度はダンテが間抜けな声を出した。
その顔にもう酔いなどカケラも残ってはおらず、むしろ腹が立つくらいに清々しい表情でバージルを抱きしめていた。
「…いや、あれは放棄っつか押し付けられた仕事だったからさ…」
「ゴミ溜めのように悪魔がいた屋敷だ、放棄したい貴様の気持ちも分からなくはないが」
未だ自分の方を向いてくれないバージルの言葉は、一言ひとことが刺を持っている。
「悪かったって…けど、なんでアイツの香水が」
「あの女を庇ったからだ」
ダンテの言葉を遮って、バージルが答えた。
「…は?」
あまりにも素早い解答に、ダンテは思考が追いつけずにいた。
すると、ようやく彼の方に向き直り、
「レディが襲われたところを庇った。それが何か問題でも?」
と、今度はバージルがダンテを責め始める。

この氷のように冷たい悪魔の兄が、人を庇った…?

その事実が余計にダンテを苛立たせた。
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