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□下弦の月(DN)
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蒼白い欠けた月。

それは、アンタにそっくりだ。
だれにも触れさせない所から、俺達を見下ろしてる。

そうだろ?…バージル


【下弦の月】


「どーしたんだよオッサン。物思いに耽るって柄でもねー癖に」
生意気な声と共に現れたネロが、正方形の段ボール箱2つを 抵抗もなくダンテに向かって投げ付けた。
「おい!大事なピザに何てことしやがるんだ、このクソガキがっ」
水平に投げて貰ったものの、かなりの力で投げられたので、腕で受け止めたダンテの神経はびりびりと痺れている。
へへっ、としてやったりといった笑顔を見せるあたり、ネロはまだ幼かった。

…けれど。


似てるん…だよな…


柔らかそうな銀髪。
アイスブルーの瞳。
普段は仏頂面の癖に、変にお節介焼きで。

「オッサン?ピザ、落ちてるぜ?」
ネロの言葉に我に返ったダンテが目にしたのは…
「なんてこった!!俺の命綱がぁぁー」
ぼーっとしているうちに落としたのだろう、2箱のピザは、彼の足元でぐっちゃりと悲惨な姿になり果てていた。
いい大人が頭を抱えて喚く様子を、ネロは腹を抱えて笑った。
「ンのクソガキ〜…!」
新しいピザ買ってこいと喚くダンテに、ネロは笑ったまま嫌だね、とひとこと。

そのかいま見る柔らかい笑顔さえが、『彼』と重なる。

「??オッサン…?」
突然腕を掴まれたと思えば、すでにネロの華奢な身体はダンテの腕の中に収まっていた。
「ピザ…今ならまだ食えるぜ?」
「今はピザよりこうしていたいんだよ」
「……ピザと比べるなよ」

ネロは仕方なく、彼の逞しい腕に身体を預けた。
…本当は解っていたけれど。

今、ダンテが想っているのは、 『亡き兄』だということも。



「…オッサン」
「ん?」
ふと呼ばれて腕の中の少年に視線を落とすと、彼は挑戦的に笑って言った。
「見てろよ、今に俺のこと夢中にさせてやるからな」
「…あぁ。じゃぁまずはピザをくれ」


夜に響くふたりの声と幸せそうな姿は、果たして月にはどう写っているのだろうか。



end...

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