Main

□*To be...(DN)
1ページ/3ページ


『…また会えるよな?』

そう、尋ねるのが精一杯で。

黙ってByeのサインを送る背中に、本当は素直に言いたかった。


……また逢いたい、と。


【To be...】


時が経つのは早いもので、あの事件から半年が過ぎた。

街は徐々に活気を取り戻しつつあり、建物の復興に追われていた。
しかしそんな地道な作業に向かないネロはというと、今となっては名前だけとなった教会のベンチに横になってサボるのが日課だった。
「…暇だな…」
割れたステンドグラスから差し込む光に目を細め、欠伸をひとつ。
騎士団がなくなってしまった為ネロは職無しになってしまい、暫くは雑魚悪魔の退治をしていたのだが、すっかり平和になったフォルトゥナにもはやデビルハンターは必要なかった。
「身体が鈍っちまうぜ…」
ブルーローズをくるくると回しながらぼやく。

こんな時、あのオッサンが相手してくれたら…

ふと、かつての信仰のシンボルだった悪魔の像を見上げて思う。
ここで初めて手合わせし、初めて自分を本気にさせた男。
初めて自分を負かせた男。
「…バッカみてぇ!」
頭にチラつく男の顔をかき消そうと、ネロは思いきりブルーローズの引き金を引いた。
パンッ

乾いた音が教会に響き渡り、ぱらぱらと割れたステンドグラスが地面に降る。

…あぁ、あの時もこうやっておっさんに逃げられたんだっけ…

「おいおい、急にぶっ放すなよ、危ねぇな」
「!?」
突然降って来た声に驚いて撃った空を見上げると、実に半年ぶりに姿を現した赤いコートの男が銃弾を持って自分を見下ろしていた。
「おっさん!?何だよ急に…っ」
慌てて跳び起きると、ネロはすっとんきょうな声をあげた。
自分が思い返した時と全く変わらないシチュエーションで現れたものだから、感動するどころではない。
「おいおい…半年ぶりの再会がそれとはご挨拶だな」
肩を竦めると、赤いコートの男…ダンテは、軽い身のこなしでネロの目前に着地した。
「仕事で近くに来たから寄ってみたんだが…坊やはサボりだって聞いたんでな」
若いうちからサボると老化早まるぞと付け加え、くしゃり、と犬のそれを撫でるような乱暴な手つきで頭を撫でられた。

…それだけなのに

「…っ、触ンな!」
パンッと彼の手を振り払い、ネロはダンテを睨んだ。
ダンテは驚いた顔をして、どうしたと尋ねる。

…チクチクと痛む…

「何で今頃になって…」
「あ?」
「何で今頃のこのこ現れたんだよっ、このクソオヤジ!!」

バコォォンッ!!

「ぶっ」
勢いよくネロのバスターがダンテの顔にヒットし、ばたんと音を立てて倒れ込む。
「何しやがんだ…ンのクソガキ…」
殴られた頬を摩りながら起き上がったダンテの目に映ったのは、
「人の気も知らないで…ッ」
ぎゅ、と拳を握り締め肩を震わせ俯く少年の姿だった。
「坊や?…泣かせるようなことしたか?」
さすがに驚いて彼の顔を覗き込もうとするが、
「泣いてねーよ!」
怒声と共にそっぽを向かれてしまった。
…が、その声は怒りではない震えを含んでいて、ダンテはため息を零す。
「あー…悪かった。本当はもう少し早く顔出すつもりだったんだ。だがレディの奴がこの街の修復費を払うまで出禁だとかほざいてな」
「…別にアンタになんて会いたくなかった」
「素直じゃないな」
坊やらしいけどな、と笑い、ダンテは踵を返す。

とたん、
「ダンテ…っ!」
ネロは無意識の内に彼の腕を掴んだ。
その拍子にばっちりと目が合って、顔が熱くなるのが分かった。
「どうした?」
アイスブルーの瞳に映る自分は、まるで恋する少女のような顔をしていて…

恋…だなんて。
「な…ぁ、いや…あ、アンタのせいで俺職無しなんだよ!」
自分の考えを振り切るように、ネロはダンテにイチャモンをつけた。
「しょーがないだろ、やんなきゃこの街ごとふっ飛んでたんだぞ」
動揺した彼に気付かない振りをして、当たり前のようにそう言ったダンテもまた、

…まさか、この坊やに限って、な…

目の前の少年の動揺した様子に、そう勘ぐっていた。
…その、まさか、なのだが。
「!そうだオッサン、俺を雇え」
「はぁ?なぜそうなる」
「まだやってんだろ?悪魔狩り。だったら俺腕に自信あるし、」
「待て待て待て。勝手に話を進めるな」
どこまでも自分勝手なネロを、半ば呆れながらダンテが制した。
「悪いがお子様を雇うほど衰えてない」
「金がない、の間違いだろ。オッサンがやるより俺みたいな好青年がやった方がいい宣伝になると思うぜ」
「何が好青年だ。大体お前さんが稼ぐ必要がどこにあるんだ」
「…それは…」
急に言葉に詰まるネロに、
「お嬢ちゃんと孤児院やってるんだろ?」
ずばり核心を突く。
「さっきお嬢ちゃんに会ってな…だったら尚更、ここ離れる必要もないんじゃないか?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ