nonaggression territory

□ACT.1
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世界を喰らい、更なる高みへと、自分の馬鹿げた位に大きな力に耐えうる屈強な世界を、と渡り歩き此処まで至った。

それは『』と呼ばれ、真理と呼ばれ、何も無い真っさらな世界に色を加えた主のみが踏み入れる事を許された世界。

何の変化も無い退屈で快楽溢れる世界で、無を嘆く。

主である女は混沌そのものであるアリスに心を奪われ固執し続け漸く手に入れた。

主以外踏み入る事を禁忌とされた世界で、ただ二人在り続けるという形で。

時には殺し合い、討論し、貪り合い、外の流れに構わずただ怠惰に、爛れた生活を送り続けた。

数える事すら馬鹿らしく感じるまでの魂を消費してもなお互いを求めあい時の流れに捕われず過ごしたが退屈で仕方が無かった。

そこで見付けたのが聖杯戦争。7騎の英霊、7人の魔術師。 古今東西全ての英雄が願いの為に技を、知を競うその闘争に興味を抱いた。

彼女と殺し合うのは堪らなく楽しい。 至高である彼女を味わうのにこれ以上無い快楽以外存在しなかった。

ただ感情を忘れた。 至高を抱くのに必要な感情以外の全てを忘れた。 使わなかったから。

だからその感情に胸を焦がす。 絶望とは? 悲哀とは? 怒りとは?

興味を抱いたそれが教えてくれる気がした。



―― ACT.1 白子 ――



見るからにみすぼらしく、ろくな生活を送れてない子供は日本でも少なくない。

育児放棄、DV、両親の不在。 それを力に変えられる子供は成長すれば成功出来るだろうが、大概の子供は打ち勝てない。

その子供もそんな子供だった。 両親からの度重なる暴力。 最初こそ機嫌が悪いのだと笑顔で自分の大好きなお菓子を差し出した。

その発想が悪かった。 両親はその行動に対して更なる暴力で答えた。

何時しか家でも外でも人を恐れるようになり、怖いから、相手をして欲しいからとガムやマシュマロを差し出した。

でもだ、そういった行動や両親からの暴力で痛んだ服や目に見える傷からそこに居ても居ないような存在になっていた。

どこに行っても嫌われる。 誰に助けを求めても無駄だと、小学生と幼い年齢にしてそう悟った。

でも、だ。 幾ら我慢しても限界が訪れる。 頭髪はストレスで色が抜け、不衛生な生活の為、病的に白い肌。 身体がもう悲鳴を上げていた。

家にも帰れず、学校にも行けず、フラフラとさ迷っていると裏山に辿り着いた。

そこで、体力も尽き果て、祈るように呟いた。 ただ一言。

―― 誰か、助けて。

幸か不幸か、彼女はその一言で喚んでしまった。 冬木にて行われる7人の魔術師と7人の英霊による戦争。 聖杯戦争に於いて異端にして最悪の神秘を。



呼び出され、まず目にしたのは白子。 呼び出されたのは第五次聖杯戦争だと聞いた。 文明も発達してる筈なのに何で白子がいるのかと疑問に思うが、その白子の手にある紋章から主だと推察。

事情はどうであれ、呼び出されて直ぐに弱り果てた主の姿を見て拙いと直ぐに魔力を与えるが原因を探る内に魔力に関しては問題が無いことが解った。

原因は栄養失調に加え様々な要因が重なり衰弱しきっている。 無いよりましか、と魔力を送り続け混沌を通して世界に呼びかけ小さな一軒家を建てる。 急拵えだから一週かも持たないが取り敢えずは十分。

それから混沌を通してベット、点滴、食塩、水炊きの材料などを魔力から変化し、白子をベットに寝かせ、馴れない手つきでどうにか点滴を刺し、自分も寝る。

久々に使った混沌の機能に疲労した身体はすぐに眠りに着いた。


怠いながらも起き、時間を見ると4時。 昨日何時に寝た? 白子は、と窓から赤らんだ空を確認した後ベットを見ると彼女は怯えながらに私の機嫌を伺っていた。

「……これ」

小さな手を延ばし差し出されたのは、ずっと握っていたから形が崩れ、昨日の召喚で砂利だらけになったマシュマロだった。

それに気付き下げようとした手からそれを取り上げ口に入れる。 汗を吸い込み土が付いているがどうにか食べらる。

というか食事自体が久しぶりだから状態はどうでもよくて食べるという事自体に意味があった。

それを見た白子は突然泣きだし、私の腰に抱き着いて来た。 どうしようか、と混沌から情報を引き出し頭に手をのせ軽く抱きしめた。

抱きしめて改めて思うが肉が無い。 本当に骨と皮だけといっても過言では無いような体に不快な思いを抱く。

人間味のある青臭い正義感。 そんな物がまだあった事に驚きながらも早速の発見に嬉しい筈が悲しいような、悔しいような感情に戸惑いを覚える。

「食べたら駄目だったか?」

その問いに白子は抱き着きながら首を横に振る。

「そうか、ならマシュマロのお礼に何か食事を作ろう。 おいで。」


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