追憶の彼方の記憶〜remembrance〜


□序章:そして物語は幕を開ける
1ページ/1ページ



序章:そして物語は幕を開ける




現代の発展した文明は昼も夜も、一日中、一年中光に満ち溢れている。

全てを照らし、全てを晒し、そして全てを暴く。



…………はずだった。



しかし今は見渡す限り闇、闇、闇………………………。
『闇』によって支配されている、現代ではありえない事態。

闇によって、静寂によって、沈黙によって、冷気によって、支配されている。




「はぁっ…、はぁ……っ」



その静寂を破るようにして人の荒い息遣いが聞こえてきた。

そして不意に、暗闇からまろぶようにして男が現れた。


歳はわからないが成人は越えているように見える。
銀髪碧眼で、マントを羽織っている出で立ちはここ日本では不自然だ。
さらに服は破れ、身体中の傷から血がにじみ、服や髪にこびりついていた。


彼はひたすら走っていた。
後ろを振り向かず、言葉通り『一目散』に。

その理由は、彼の後ろから聞こえてくる複数の足音が教えてくれた。



「くそっ………こんなところで死ぬわけには……いかない……の、に………………」

彼は息も切れ切れに言葉をつむぐ。
足が縺れて転びそうになるが転ぶこともこの足を止めることも叶わず、彼は走り続ける。

肺が潰れたかと錯覚するほど走り続けた。


そして偶然にも角を曲がったところで目の前に人がいた。



彼は追われている身のはずなのに、その口に笑みの形を作る。

「こいつ…を利用すれば……助か、る………。私はまだ……生きれ、る」

彼は迷わずその人に向かって走っていった………






「………くそっ、あいつめ」



裏路地のある一角で一人の女性が悪態をついていた。

「見失うとはなんたる不覚」

ギリッと悔しそうに歯を軋ませる。


「…………まだ近くにいるはずだ、探せ!!探しだしてあいつを、√を殺せ!!!」


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ