宝物
□君自身でなくとも
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「副隊長ー今暇で……」
「暇に見えるなら、眼球くりぬきましょうか?」
執務室の扉を開けながら入ってきたカガルをリコニスは、瞬時に睨み付け、何かを握り潰した。
「おや珍しい。副隊長の機嫌が悪いなんて」
「隊長が逃げやがったんです。姫様に会うのは嫌だとか抜かしながら」
ぶつぶつと文句を言い、クーの机を蹴り飛ばす。勿論、机の上には例のごとく、書類の山があった。
ドサドサッ──
「副隊長、片付け誰がやるんスか…」
絶妙なバランスで成り立っている山は、呆気なく崩れ、床一面に散らばった。
「隊長に決まってるでしょう? 頼まれたって私はやりません」
「……そスか」
珍しく黒いものを背負い、彼女は笑う。誰が見ても、目は冷たかったが。
「ええ。それで、二人は何の用です?」
「鍛練場で面白い事をやってるんで、呼びに来たんですよ」
「…面白い事?」
「はい。ストレス発散には丁度良いかと」
「折角だから、行きます」
最後にクーの机をもう一度蹴り飛ばし、彼女は二人を引き連れ部屋を出ていった。