はに*らば
□ナイショのお客さん
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──ナイショのお客さん
<忍跡:ギリ本番無し>
今夜はとっても月が綺麗。
──………コンコン、
そんな夜に、突然窓を叩く小さな音が。
しかし、部屋の主である小さな男の子・景吾は特別驚くこともなく窓に近付いた。
そこには、優しい笑みを浮かべたお兄さん。
(あ)(け)(て)(?)
大袈裟に口を動かす仕草が可笑しくて、景吾はクスクスと笑いながら窓の鍵を開けました。
「こんばんは、景ちゃん」
器用に靴を脱いで入ってきたのは、お隣の家に住む忍足侑士くん。
家族ぐるみで仲良しだけれど、それとは別に。
侑士の部屋と屋根伝いである景吾の部屋に、時々こうして遊びに来る。
「ひさしぶりだなっ、ゆーし!」
「せやなぁ、昨日まで学校のテスト期間やったからなぁ」
侑士と会えたことが嬉しくて仕方ない景吾。
まだ制服姿である侑士のYシャツの裾をクイクイと引っ張る。
その愛らしさに侑士は景吾を抱き上げ、ぷにぷにした頬にキスを落とした。
「せや、今日は景ちゃんにお土産があんねん」
片腕で景吾を抱っこしたままポケットから取り出したのは、イチゴ味の飴玉。
景吾の瞳が輝いたのを見て、侑士はふにゃりと表情を崩した。
「ちょーだい、あめちょーだいゆーし!」
「ん〜…せやな〜…どないしよっかなぁ〜?」
予想外の返答に、ガーンッ、と擬音が聴こえてきそうな顔をする景吾をベッドの上に降ろす。
確実に子ども用ではないであろう大きなベッドの上で、侑士は景吾と向き合うように座った。
「飴ちゃん、欲しいん?」
「………欲し、い……」
膨れっ面の景吾の目の前で、侑士は手の中の飴玉を躊躇なく口に頬り込んだ。
「あ!…っ、ゆー…っ、」
何か文句を言おうとした景吾を抱き寄せ、膝を跨ぐように座らせる。
ぷるん、とした唇に、イチゴ味の口づけをした。
「…っん、……ゆーし…?」
「欲しかったら俺から捕ってみぃ?」
わざとカラコロと音を立て、飴玉の存在をアピール。
負けず嫌いな景吾は、挑発にのってしまい。
「…っ、みてろよ…っ!」
すぐ目の前にあった侑士の頬を両手で挟み、勢いよく唇をくっつけた。
少し怯えながらも侑士の唇を割って舌を伸ばす。
大人はこういうキスをするんや、と以前侑士から教わった。
「んン…ふ、ぁむ…っ、ん!」
ふいに舌先に甘みを感じた、その瞬間。
今まで大人しかった侑士の舌に、景吾の舌はあっさり絡め取られた。
「んぅぅ――…っ!んンっ、ふ…はふっ…!」
離れようとした頭をがっしり後ろから押さえられる。
侑士の頬から滑り落ちた手は、かろうじてシャツを握り締め。
「ぁふ…、は…ぁ…はふ…」
やっと唇が解放された時には、景吾の身体は完全に力が抜けてしまっていた。
くてん、とした小さな身体を大事に抱きかかえる侑士。
「あかんやん景ちゃん、まだ飴ちゃん捕れてへんのに」
「ふあ…らってぇ、…ゆーしがぁ…っ、ひぅ!、…」
口の端から垂れる唾液を舐めとってやると、それだけで身体をビクつかせる。
濡れた瞳、火照った頬、何もかもが可愛すぎて我慢出来ない。
「飴ちゃん捕れんかったから、罰ゲームせななぁ…?」
溶け切れなかった飴玉を、侑士はガリッ、と噛み砕いた。
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