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□システムエラー、修復不可能
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“禁断の恋”
“恋愛ゲーム”
魅力的な遊びだと
思いませんか?
……そんな嘘を紡いだ。
システムエラー、
修復不可能
『しかけたのはどっち?』
─────────お[し]あと
胸が痛かった。
でも、チャンスだと思った。
廊下の一番奥にある、化学教官室。
この人に近付くにはこれしかないのだ、と。
覚悟を決めた。
………それを今更、
「信じられるかよ、ばーか。」
「なんや、相変わらずつれへん子やなぁ。」
薄笑いを浮かべ、忍足は白衣のポケットから煙草の箱を取り出す。
じゅ…、とライターを擦る音がして、ゆっくりと息を吐くと独特な香りが部屋を舞った。
「…言っても無駄だろうけど、ここ禁煙ですよ、先生。」
「不純異性交遊はオッケーやのに?」
あぁ、不純同性交遊か、などと笑う忍足に背を向けてシャツのボタンを留めるのは跡部景吾。
この学園の生徒であり、生徒会長でもある。
壁に掛けられた汚い鏡を見て、小さく舌打ちをした。
「跡付けんなっつっただろ。」
「跡部が俺のモンになる言わへんからやろ。虫除けくらいさせてぇな。」
「…ふざけるな。」
「好きやねん、跡部。」
「嘘は嫌いだ。」
いつの間にか後ろに立っていた忍足の手が、整えたばかりの服を乱そうと裾から侵入してくる。
「…な、もう一回ヤろ。」
「阿呆か、次は俺のクラスで授業だろうが。」
「え、せやったっけ?」
「分かったらさっさと放…っ」
触れるのをやめた手は、代わりに跡部の肩を捕らえた。
乱暴に壁に押さえ込まれ、そして優しいキス。
「…ン、…ふ…ぅ、ぁっ…」
いつものこと。
こうやって散々人の身体を煽っておきながら。
「…ふ、可愛え。」
…唇を離し、これで終わり。
「…ハァッ…、くそ…っ…」
「それそれ、授業中も俺のこと、そういう色っぽい目つきで見とき。」
「……悪趣味…っ…」
可能な限り睨みをきかせ、跡部は飛び出すように部屋を後にした。
静かな廊下、教室までの道を早足で歩きながら思う。
どうしても、奴が好きだと。
……遊戯の始まりは、ある日の放課後。
呼ばれた時間よりも10分ほど早めに教官室に行ったら、半裸の忍足と女生徒がいた。
別に驚きはしなかった。
前から噂は聞いていた。
「…失礼しました、また後で来ます……」
「あーええよええよ、入り。ほれ、お前はもう帰りなさい。」
煙草を灰皿に押し潰し、何事もなかったかのようにシャツと白衣を着る。
女生徒も特に文句は言わず、むしろあの跡部が目の前にいることに興奮しているようだった。
「じゃあねー、せんせ。」
「はいはい、じゃあね。」
バン、と戸が閉まり、狭い部屋に2人っきり。
「堪忍な、変なトコ見せてもうて。」
「……いえ、……それで、用事はなんでしょう。」
「ん、このプリントと、その実験の説明を……」
忍足の話を聴きながら、頭はぼーっと霞んだまま。
蝉が煩いせいかもしれないし、部屋が暑いせいかもしれない。
「…そんな感じで。頼むわ。」
説明が終わると、忍足はまた新しい煙草を取り出す。
「…ここ、禁煙ですよ。」
呟けば、忍足はさも可笑しそうに笑った。
「ははっ、さっきのは咎めへんのに喫煙は怒るんやな。」
何と言って咎めろと?
そんな権利、ないと知っている。
「…いつもあんなことしてるんですか?」
「たまにや。…言うとくけど、俺から誘ったことは一度もないからな。そこ重要やで。」
それは。
裏を返せば、誘われたら断らないということ。
「……なら、俺ともしませんか、そういう遊び。」
近づきたかった。
「退屈してたんです。」
傍にいたかった。
「先生なら、後腐れもなさそうだし。」
その手で、触れてほしいと思ってた。
「………どうです?先生。」
好きだから。
………嘘をついた。