□本当は××な昔話
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「…なぁ、そろそろ学園祭の季節だな…」


…―それは、宍戸のそんな一言から始まった。






庭球御伽草子

本当は××な昔話







「あ?…あー、そういや委員の奴らがクラスの出し物の案募集してたな」

「えー、そうだったっけー?」

「ジローは寝てたんだろどうせ…、けど、それがどうかしたのかよ?」

何気ない話題のわりに深刻な表情をしている宍戸を不思議に思い、首を傾げる向日。

時刻は夕方、いつも通りに部活を終え、部室で着替えているところだ。


「いや、だってよ…俺たち毎年テニス部で出店してるじゃねーか…」

「……ああー……」

宍戸の暗い声に、向日も口元が引き攣る。

そうだった、忘れていた。


「またやんのかな、ああいうの」

「一昨年はホストクラブ、去年はコスプレ喫茶…」

「俺アリスの恰好楽しかったC−」

ニコニコと無邪気な慈郎に、溜息をつく二人。


氷帝学園内で常に生徒の注目を集める男子テニス部は、毎年学園祭でもその力を発揮していた。

サービス精神旺盛で負けず嫌いな我らが部長様が、無難なアイディアを好むはずもなく。

「ホストはまだしも、コスプレはマジで思い出したくねえ…」

「やめろよ、俺の記憶からはもうとっくに抹消されてんだから…」

「えー二人とも可愛かったC−、ひらっひらのメイドふk…」

「「うわああああああああやめろおおおおおおおお!!!!!」」

頭を抱えて絶叫する二人の背後から、ふいにクスクスと笑い声が聞こえた。

「ちょっと、大丈夫?落ち着いてよ」

「滝……」

振り向けば、静かに微笑んでいる滝の姿が。

「でもちょうどよかった、そんな二人に良いニュースだよ」

「…え?」

「今年はテニス部の出店が無しになりそうなんだ」

予想外の一言に、三人の頭上にはハテナが浮かぶ。

「な、なんでまた…、てか跡部は?納得しねえだろあいつ」

「いや、それがね…」

困ったように笑う滝が言うには、去年のコスプレ喫茶が原因らしい。

要は大盛況過ぎて、収集がつかなくなってしまったのだ。

新型iPhone発売日の列をも超えんばかりの大行列に跡部は王子様のコスプレのまま高笑いを上げファンを喜ばせていたが、やはり学園祭の趣旨を考えると特定の店に人気が集中し過ぎるのは好ましくないのだろう。

教師陣と生徒会で話し合い、今年の出店は見送る方向で話が進んでいるとのこと。

「なるほどな、跡部も他の生徒の出店を邪魔するのは嫌だろうしな」

「でもそれにしたって、跡部が何もしないはずなくね?」

「ふふ、鋭いねー岳人」

じゃん、と効果音をつけて滝の顔の前に掲げられたのは、一冊のノート。

「今年は出店の代わりに、演劇を行うことになりました!」

「「はあああ!?」」

出店は諦めたものの、テニス部が何もしないのは全校生徒の期待を裏切ることになる。

そこで跡部が提案したのが、講堂での舞台発表だった。

舞台での出し物であれば持ち時間が決まっているから、その時間だけ人が集まることになる。

氷帝の講堂は全校生徒が余裕で入れる規模があるし、小さな教室での出店のように混雑は起こらない。

発表の間は出店に軒並み閑古鳥が鳴くとしても、せいぜい一時間程で済むだろう、という寸法だ。

「演劇って…恥ずかしいことに変わりはねえじゃねーかよー…」

「まあまあ、配役にもよるんだし短い時間で済むんだし」

「で、そのノートは?台本?」

滝の手にある黒い表紙の冊子を指差す向日。

「うん、でも俺そんなもの書いたことないしさー、不二に相談したんだよ、そしたら」

「え、なんで不二?仲良いの?」

「なんとなく不吉なコンビだな…」

「たまに遊ぶんだー、それでね、不二がこれ貸してくれてさ、


昔話のタイトルと出演者の名前を書くと最適な配役で勝手に台本作ってくれるノートなんだって。


「…え、なに、なんでいきなり非現実的なモン出てきた?」

「世界観間違えてね?不二って悪魔と契約でもしてんの?」

「すっげー!やっぱあいつってすげーんだなー!」

各々の台詞を無視して、滝は頬に手を当て溜息をつく。

「ただねー、何を書いてもアレな内容になるんだよねー…」

「え、もう書いたのかよ!大丈夫!?悪魔に魂とか持ってかれてねえよな!?」

「どんな話どんな話!?」

「えっとねー、……」






※パラレル&裏表現有注意!※
※跡部受でさえあればどんな話でもOKな方のみお進みください※






太郎
「王道もいいかなと思って…」


ヘンゼルグレーテル
「うっかり学外者書いちゃって…」


ずきん
「てかこうなったらもういっそ氷帝じゃなくてもいいかなって…」



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