混沌的世界戦記・ヴィジュアル侍乱闘編

□第十話 プレミア物をゲットせよ!
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限定、絶版、販売終了品…
コレクター魂を熱く燃やす者達にとって、その響きは格別なものである。
それはこの堕天使とて、例外ではなかった…

第十話 プレミア物をゲットせよ!

世界暦2036年 天魔京 西地区 AM3;55
大手玩具店 玩具ザウルス天魔京一号店

天魔京最大のおもちゃ屋であるここで今日、限定5000個の商品が販売される。
開店前の、しかも深夜というこの時間帯に、木綿豆腐一同がビニールシートを敷いて陣取っていた。無論、彼ら以外に人はいない…
「ねぇねぇギィティ。一体何が発売するのぉ?」
あんまんを食しながら、ミルフィーは妙にそわそわしたギィティールに声をかける。
「5000個限定のゴリラロボットだよ!」
いつになく興奮した様子で、彼は嬉々としながら答える。
仕事がない時などに、彼がよく埃を取っている金メッキの恐竜ロボやゴリラロボットは

宝富(ホウフ)

というメーカーから出ている電動のプラモデルだ。電池を入れて、スイッチを押すと咆哮したり歩行したりする

機械生命体ゾーン

というシリーズの商品である。
ギィティールは何が何でもこれだけは入手したいのだという。
「限定、絶版、生産終了という気高き響き!素晴らしいぜっ!!」
そんなギィティールを見ながら、雪千代と舞楽は微笑んでいた。
「ギィ兄もほんと、おもちゃ好きよねっ」
「そう言うアタシ達もブランド好きなんだよね♪」
「言えてる〜!!」
その後ろで智伽はその商品と通常品の写真を見ながら首をひねっていた。
「俺にはどっちも同じに見えるんすが…」
その言葉を聞いて、ギィティールは血相を変えて彼に近づいてきた。
「智伽君!通常品は装甲が黒いのに対し、限定品は装甲が赤いんだよ!それだけじゃない!限定品は内部装甲が黒いから、通常品と組み合わせると、全身黒いゴリロボが出来るんだよ!!これは革命的なんだぜっ!!」
熱弁振るうギィティールからは、とても天界最強と謳われるほどの武人とは思えない、マニアちっくオーラが吹き出ていた。
「は……はぁ…」
彼の異様な情熱に気圧されて、智伽はただ頷く事しか出来なかった。

ブロロロロッ!!

背後で車の音が聞こえた。
振り向くと、そこにはネンジュームキューのロゴの書かれた軽トラックがあった。
「あ……あの…頼まれた商品をお持ちしました…」
車から出てきたのは、以前、雪千代に髪を切られた元旅の武芸者、剣崎 剣之助。武芸者だった頃の風格はなく、どこにでもいそうなコンビニの店員という風格に変わっていた。
「ご苦労様!」
雪千代は、彼の持ってきた商品を受け取り微笑むのだが、剣之助は彼と目を合わせようとはしない。
「それじゃ…自分はこの辺で……」
そそくさに立ち去ろうとするが
「アンタの店にはちょくちょく行くからよろしくね♪」
などと声をかけられてしまった。
(お主とは関わりたくないでござる!!)
それが彼の本音であった。

車が消えた方向を見つめ、雪千代は勝ち誇ったような笑みをこぼす。
「姫も性格悪いよねっ。あの時の事まだ根に持ってるんでしょっ?」
舞楽は呆れた表情で彼に問いかける。
「アタシの事を女装した不届き者って言ったのよ!あぁ〜もぉっ!思い出しただけでもムカつくわよ!!」
すると、子供のようにかんしゃくを立てる雪千代。
「姫ぇ、あんまり怒るとぉ顔にしわが出来るよぉ」
そう言って、ミルフィーは雪千代にあんまんを手渡す。
「ごめんね。ちょっと取り乱しちゃったわ」
あんまんを一口食べ、冷静になった彼は顔を赤らめて照れる。
「そういえば、さっきの荷物って何なのっ?」
舞楽は、剣之助が持ってきた商品の入った比較的大きな紙袋を手に取り、開封してみる。
すると、中から出てきたのは

ピーナッツ入りブロックチョコX6
激から唐辛子スナックX3
本日発売の週刊誌
女性向けブランド品雑誌

などが入っていた。
「とりあえず、これで時間つぶしましょ」
そういうと、彼は女性向けブランド品雑誌を舞楽に渡し、ブロックチョコをミルフィーに、週刊誌をギィティールに、激から唐辛子スナックを智伽に渡した。

ようやく朝日が昇り、周りは明るくなってきた。
気がつくと、雪千代達の後ろにも、ちらほらと並ぶ客が現れた。
「ちっ!ライバルが集まってきやがったな…」
ギィティールに緊張が走る。
この商品の為に、昼食を安い物で我慢したりと切り詰めてきた。

負けられねぇ!!

闘志をむき出しにし、後ろに並ぶお客さん達を睨む。
普段から目つきの悪い彼が睨むのだから、気の弱い相手はひとたまりもない。
「…」
中肉中背の男や、ひょろっとした体格の男たちは、慌てて視線を下げる。
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