混沌的世界戦記・ヴィジュアル侍乱闘編

□第五話 特殊警備隊ってどぅよ?
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光ある所に影がある
影ある所に光がある
当たり前である…

駆除師と呼ばれる始末屋家業同様に闇に蠢く特殊業種があった。
その名は

天魔京特殊警備隊

彼らは人知れず任務をこなすのである。無論、本人達は人知れずと思っているが、実際のところ、バレバレなケースもあったりする…

第五話 特殊警備隊ってどぅよ?

つい最近、雪千代達が住むこの木綿豆腐の周辺に出来たマンションに引っ越してきたと言う二人組が、菓子箱を持って尋ねて来た。
「どうもこんにちはー」x2
二人組は青年で、小学校からの同級生で、同じ大学に通っているらしい。
「困った事があったらいつでも相談してね」
そう言って舞楽は二人に店のチラシを配る。
「よろしくですー」x2
二人は見事にハモりながら帰っていった。
その後姿を見ながら、ギィティールは不審がった。
「どぉしたのぉ?ギィティ」
熊のぬいぐるみを抱っこしながら尋ねるミルフィー。
「あの二人、学生じゃねぇぜ。武術の心得がありそうだな…」
「まぁ、同業者だったら厳しいけどねっ」
ギィティールの心配をよそに、舞楽は菓子箱を開けて、中のお菓子に手を伸ばす。

その頃、雪千代と智伽は仕事を終えて、帰る準備をしていた。
「智っちさー。もっと強くなろうよん♪」
相変わらず、魔獣に打ちのめされる智伽に呆れる雪千代。杖代わりにビニール傘をつきながら
「もうしばらくしたら、母星から新しい武器セットが届くっすから…」
と喋る智伽。彼の星からは、定期的に衣装やら武器やらが時空転移で送られてくる。戦闘衣装のコンバットスーツは装着解除の度に、メンテナンスの為に転送される。
メンテナンスとはいっても修理が主で、強化されたためしがない。
「そんなんじゃゾルゲルゲに負けちゃうゾ!」
小生意気に微笑む彼は、どう見ても女性にしか見えなかった。
「姫さ〜ん!!」
堪らず抱きつこうとするが、彼の平手打ちを食らって大げさに吹き飛ばされる。

「相変わらずだな、兄ちゃん」
声のする方に振り向くと、そこには茶髪でモヒカンの大男が立っていた。背丈は190cmといったところか。
「何だ、アンタかい」
彼を見た雪千代の顔が険しくなった。その異変に気づいた智伽は、必死に二人の前に立つが
「智っち。彼はアタシの弟よん♪」
と言って紹介をはじめた。

政宗(まさむね)

と呼ばれる弟は、どう見ても同じ遺伝子とは思えないくらいの違いがあった。

背丈が雪千代より30センチ近く大きく、筋肉質ではないものの、がっしりした体格の彼が血の繋がった兄弟とは、俄かに信じがたいものがあったが、言われてみると、どことなく顔つきは似ていた。
「いつも兄ちゃんがお世話になってます」
「ちょっとぉ、お世話してんのはアタシの方よ!」
頬を膨らまして反論する雪千代の着物の首根っこを掴み、まるで猫のように抱えあげた政宗は
「ちょっと5分ばかりお借りしますね」
と軽く会釈をし、側に止めてあった高級そうな車に入っていった。

車に連れ込まれた雪千代は、椅子に座るなり
「いったい何の用だ?こんなトコまできて」
男口調に戻って、弟に食って掛かる。
政宗は呆れた顔で彼のおでこをデコピンする。
「いってぇな。何すんのよ!」
「いい加減家に戻ってこいよ。復讐劇もいいけどよ…」
その言葉を聞いた瞬間、雪千代の顔が怒りで赤く染まる。
「俺はあの人の仇を討つまで帰らねぇって言ってんだろ!!」
流石に言葉が過ぎたと思った政宗は
「わかったよ。ヤツの所在がわかったら連絡するよ。あと………ゴメンな」
と頭を下げる。
その姿を見て次第に冷静になった雪千代は
「今度家には帰るよ。親父達によろしくな」
しおらしい態度で帰宅を約束する。

車から出ようとする雪千代に政宗はニヤリとしながら話しかける。
「そういえばお母んが兄ちゃんの事が心配だからって護衛っぽいものを派遣したって言ってたな」
その言葉を聞いて、雪千代は頭が痛くなった。
「こりゃまたご苦労な事で…」
溜め息を吐きながら、雪千代は車から出て行った。

弟、政宗と出会ってから、雪千代は無償に身の回りを気にしていた。
「ねぇ、どうしたのっ?」
舞楽は帰宅するなり、妙に慌ただしくする雪千代に声をかけた。
「ねぇ舞楽。今日アタシがいない時に変な奴ら来なかった?」
来客用のソファーの裏を確認したり、掛け軸の裏を入念にチェックしながら彼は尋ねてみた。
「そうねぇ…そういえば近所に大学生が二人引っ越してきたって挨拶に来たわよっ。ギィ兄は同業者かもって疑ってたけどねっ」
その言葉を聞いて、雪千代は政宗の言葉を思い出す。
(もしかしたらそいつらが…?)
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