混沌的世界戦記・ヴィジュアル侍乱闘編

□第二話 趣味は魔石集めですっ!
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魔石(ませき)

この世界には、そう呼ばれる非常に高価で貴重な宝石が多数存在する。
一説によれば、それは神々が後世に残した遺産であり、世界に108個存在すると語られている。

第二話 趣味は魔石集めですっ!

「まぁ、俺達がドンパチやってた頃は108個あったんだろうけどな。祖国に連絡してみた所、現在じゃ24個しか残ってねぇ様だぜ」
天の国を追放された割には、未だに情報網を持っているギィティールは、送られてきた書類を解読しながら説明する。
「って事は、今、私が持ってるのが20個だから、残りはあと4つって計算よねっ!」
舞楽はロリ巫女衣装の懐から巾着袋を楽しそうに取り出す。
彼女の一族は魔石を管理する役目を持っているらしいのだが、末裔であるこの女性は何と、全ての魔石を手に入れ次第、換金すると言っているのである…
「神々の遺産を売っちゃうってアンタ…」
呆れた表情で雪千代は溜め息を吐いた。
「神話のような話みたいになりたくないから売っちゃうのよっ!」
神話の中では

魔石を管理する一族の女性は、魔石を産み落とし終わると、その身を魔石に変える

と語られている。
その話の中では、魔石を失って崩壊寸前の世界を守る為に女神は愛する者を捨て、己の身を母胎に魔石を復元し、新たな魔石に姿を変えた。
女神の一族の選ばれし女性は、魔石になる宿命を持っているとも伝えられている。
それが安川家らしいのだが…
「嘘かホントか知らないけど、そんなのって嫌じゃない?私は世界よりも愛する者よりもお金を優先するわっ!世界なんてどうでもいいの、私さえ幸せになればね♪」
いたずらっぽく微笑む彼女の頭を、雪千代は緑のスリッパではたく。

パコ〜ン!

室内に乾いた音が木霊する。
「痛いじゃないのよ〜っ!!!」
「お嬢様、そんな事言ってると友達無くしちゃうよん♪」
「いいのよっ!このガメツさでキャラクターが立ってるんだからっ!!」
二人のやり取りを見ながら、ギィティールは頭を抱えるのであった。
「どうにかしてよこの世界を…」


その日の夜、店に仕事の依頼が届いた。
内容は

近隣の洞窟内に遺跡があり、そこに魔石が封印されているので、盗賊などの輩に盗られる前に回収せよ

となっていた。
「遺跡っすか!何か冒険心をくすぐられるっすよ!!」
智伽はカップラーメンをすすりながら、依頼内容に瞳を輝かせる。
「ぢゃ、今回のリーダーは智っちに決定ね」
雪千代は彼の背中を叩き、親指を立てる。
「姫さん任せて下さい!俺、頑張っちゃうっすよ!!」
鼻息も荒くガッツポーズを取る智伽。熊のぬいぐるみを抱っこしたミルフィーも
「智伽君、頑張ってねぇ!!」
とエールを送る。
女性に応援されたという事により、彼の気合は最高潮に達した。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!燃えてきたっすよ!!!!!!!!!!」
周囲の気温を1℃ぐらい上昇させながら、智伽は一気にラーメンをすする。


翌日、智伽、雪千代、舞楽の三人は、遺跡の眠る洞窟に出発する。
そして、ギィティールとミルフィーは他の仕事依頼で出かけていった。

遺跡探索部隊は目的地に到着すると、周辺の状態を確認する。
そこで口を空けている洞窟は、自然にできた洞穴とはかなり様相が違っていた。それは洞窟というより

炭坑

のようであった。
しっかり照明器具も稼働しており、もはや観光名所と言った方がいいだろう。
それを裏付ける様に、入口に大きく

大人100金
子供70金

と書かれた朱色の賽銭箱が設置されていた。
「それじゃ私達は子供だから70金でいいよねっ」
舞楽はそう言って賽銭箱に三人分の210金を投げ入れると、そのまま何食わぬ顔で入っていった。無論、素知らぬ顔で雪千代も後を追う。
「…いいんすかねぇ…」
智伽は、申し訳なさそうな表情で洞窟に侵入する。
ちなみに彼らは現在21歳であり、通常なら大人料金を払わなければならない筈なのだが…
どこの世界でも言える事だが、こういった無人の観光施設ではこのような詐欺が横行している。バチ当たりと言われればそれまでなのだが

知らぬが仏

とは、まさにこの事なのであろう…


洞窟内は独特の湿気を含んでおり、狭い空間も相成って、この手の物に耐えられない人間を威圧する。
「さっさと魔石を回収して帰ろうよ〜」
湿気の苦手な雪千代は早速、不満を漏らす。
「つべこべ言わないのっ!」
彼の頭を小突きながら、舞楽は先を急ぐ。

洞窟に入った瞬間から、体が熱く感じられる。
魔石に反応すると、彼女の体は熱を帯びる。
「どうやら魔石はここにあるみたいよっ♪」
そう言って彼女が指差す場所には、神殿を縮小した様な、一見するとおもちゃに見える建造物が落ちていた。それはインテリア雑貨にも見え、魔石が入っている様には到底見えなかった。
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