混沌的世界戦記・ヴィジュアル侍乱闘編

□第一話 俺達参上♪
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この宇宙のどこかに彼らは存在(い)た…
これは、過去・現在・未来のどれにも当てはまらない時代の、混沌たる物語である…

第一話 俺達参上♪

かつてこの世界には、同種族でありながら、異なった能力を持つ者達が存在した。

聖なる力を宿す者を天使と呼び
魔なる力を宿す者を悪魔と呼んだ。

彼らは互いの権利をかけ、果てしない闘争を繰り広げた。
その戦いは熾烈を極め、世界の半分以上を焦土に変えてしまった…

幾億の夜が終わり、幾億の朝を迎え、この争いは終結する。

そして彼らは地上から姿を消し、彼らとよく似た短命の存在

人間

が繁栄するのであった。

世界歴2036年 天魔京
天使と悪魔が和解し、互いの平和を約束し、建造したと言い伝えられる都。

この世界で最大の規模を誇る都市であり、その周囲は屈強な壁で覆われている。
天使と悪魔の戦いが終焉したこの時代に何故、このような物が必要かと言うと、神話時代の戦争が残した負の遺産である

魔獣

と呼ばれる怪物が現在も跳梁跋扈しているからなのである。

天魔京ではここ数年、駆除師(セイバーズ)と呼ばれる職業が人気を集めていた。
仕事内容は主に魔獣駆除であるが、状況に応じて富豪の護衛をしたり、敵役の暗殺などを請け負うといった裏家業としての一面も持っている。


都市の中心地区に豪勢な建物があった。どうやらそこは店の様であり、看板には

万屋集団 木綿豆腐

と可愛らしい丸文字で書かれていた。
室内には、ピンク色を基調としたミニ丈のロリ巫女衣装で、足下はゴツい厚底の編上げミドルブーツと白と黒のボーダーラインのオーバーニーソックスで、パンク的要素を取り入れている個性的なスタイルの栗色で長髪の女性と、出目金の刺繍の入った、黒地に金の花魁の様なド派手な着物に両脇の腰の部分から大胆にスリットを入れ、歩く度に黒革のホットパンツとエナメル生地のピンヒールロングブーツをちらつかせる、前から見るとおかっぱ頭だが、後ろから見ると耳が出ていると言った珍妙な髪型に大ぶりな真紅のリボンを付けた、化粧の濃い女性が談笑していた。
「姫〜、今日ってお仕事入ってるっ?」
ロリ巫女は、反対側の全身鏡で自分の姿を確認する花魁に話しかける。
「いや、仕事は無いねぇ。それよか舞楽、ヨシモトタカシで化粧品半額だってさ」
花魁はテーブルに置かれたチラシをロリ巫女こと

安川 舞楽(やすかわ まいら)

に見せる。すると舞楽は服の裾から電卓と財布を取り出し、何やら計算を始める。
「う〜ん、安いんだけど…私は遠慮するわっ」
財布の中身が寂しいのか、溜め息を吐きながら誘いを断る。
「ふぅん、何ならアタシがおごったげよっか?」
その言葉に彼女は目を輝かせる。
「やったぁっ!!持つべきモノはオカマの友人ねっ!」
彼女の言葉を聞いて、花魁は引きつった笑顔を見せる。
「アタシはオカマじゃなくてヴィジュアル侍だって言ってんでしょっ!!」
彼女の言葉が示す通り、姫と呼ばれているこの人物は

皇 雪千代(すめらぎ ゆきちよ)

と言う、正真正銘の男である。何故女装をしているのかは、当人曰く

美しい存在(もの)は何を着ても似合う

といった美意識過剰な理屈からなのだそうだ…
雪千代が頬を膨らまし、自分の持論を展開しようとしたその時、正面玄関を開け、薄青の軍服の様な衣装を着た濃緑の長髪の大男と、薄青のストレートロングヘアに薄緑のベレー帽をちょこんと乗せ、薄青のパーカーにジーンズホットパンツ、黒の厚底ショートブーツといった、一見すると特撮ヒロインか幼児コスプレの様な姿をした小柄の女性が入って来た。
「んっ?何だか楽しそうだな」
大男は買い物袋を床に下ろすと、来客用のソファーに腰掛け、タバコを吹かし始める。
「さっき薬局で安売りしてたからぁ、いっぱい買い込んで来ちゃったぁ」
間延びした口調で彼女は、ビニール袋から二人が購入しようとしていた化粧品類を取り出すと、丁寧にテーブル上に並べる。
「グッジョブ!」X2
雪千代と舞楽は我先にと化粧品類に群がった。
「…お主らは子供か」
溜め息を吐きながらその光景を見守る大男の名は

ギィティール・ラインベルグ

と言う。人間に見えるが、その正体は天の国を追放された堕天使である。
そして、傍らにたたずむ女性は

ミルフィー・ランフォード

と言う名の天使である。
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