混沌的世界戦記・ヴィジュアル侍乱闘編

□第十五話 強敵に備えてやる事といったら…
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画面中央には天魔京と思われる地図と、点滅している印が映し出された。
「イキッモを倒したヤツとご対面と行こうじゃないか」
マウスをクリックすると、瞬時にジェルドランの姿が消えた。

その直後、雪千代達の前にジェルドランは姿を現す。
「!?」
それに気づいたギィティールは身構えた。
「そこの長髪、貴様がイキッモを倒したのか?」
自分よりやや短い長髪の男からは、ただならぬ殺気が溢れていた。
「…何ならてめぇも倒してやろうかぁっ!!」
そう吐き捨て、ギィティールはジェルドランに襲い掛かる。
「やろうってのか、面白い…」
ジェルドランも腰の剣を抜刀し、ギィティールの攻撃を受け流す。
「くっ…」
堕天使の力を解放していないギィティールの力は解放後の20パーセントしか出せないが、人間よりは数倍も強い。
極端な例を挙げれば、ゾウとタイマンをしても勝利できるくらいの身体能力を有している。魔石に力を封じられていた時とは比べ物にならない力での攻撃をジェルドランは見事に受け止めたのである…
今まで戦ってきた魔獣やゾルゲルゲの怪人以上の力を見せる彼の出現は、ギィティールに動揺という隙を生ませるには十分すぎた。
「力だけなら将軍クラスだな」
ジェルドランは隙の生まれた彼のわき腹に手刀を放つ。
「ぐはっ………」
攻撃を受けた部分が炸裂し、ギィティールは数メートルほど吹き飛ばされた。裂けた軍服からは血が溢れ出し、内臓と思われる物体が見えていた。
「ギィティっ!!」
叫びながらミルフィーは彼の側に駆けつけるが、ジェルドランに行く手を遮られる。
「邪魔しないでぇっ!!」
彼女は怒りに任せて、両手より光波を無数に浴びせかける。
「女が戦場に現れるなど!身の程をわきまえぃ!!!!」
光波の攻撃をものともせず、ジェルドランは怒鳴りつけると、彼女の顔面をハイキックで蹴り飛ばす。
「きゃぁぁぁぁっ!!!!」
小柄な彼女の体は宙をきりもみしながら、ギィティールの側に落下する。
意識を失って倒れる彼女の顔は歪にへこんでいた。
「て………てっめぇ!!」
妻の悲惨な姿を見たギィティールは臓器を押さえ、回復魔法を唱えながら立ち上がり、ジェルドランに殴りかかろうとする。
「ギィティ!アンタはミルフィーちゃんの回復を!!」
雪千代は化粧麗人を握り締め叫ぶ。
「姫…」
「女の顔に手を上げた腐れ外道を許しておくほど、アタシは人間できちゃいないんでね!!!!」
そう叫んだ彼の顔は、怒りで赤く染まっていた。
「威勢がいいな小娘!お前も逝っとくか!!」
雪千代を女と勘違いしているジェルドランは怒り心頭で怒鳴る。

顔面を蹴りつけられたミルフィーを見て、怒りが爆発した雪千代は自分を女性と勘違いしているジェルドランに挑みかかる。

「言っとくけどアタシは男だよ!ヴィジュアル系って言葉も知らないのかい?」
雪千代はそう言いながら、ジェルドランの背後に回り、太刀を力いっぱい横に薙ぐ。

ずぶしゃっ…

ジェルドランの背中から、青い体液が飛び散った。
「!?」
しかし、手ごたえの割には、相手の体は切り裂かれていなかった。
「オカマ如きにやられる俺ではないっ!!」
ジェルドランは即座に裏拳を放つ。

ごきゃっ…

骨の折れる、鈍い音が辺りに聞こえる。
「うぐぁっ……」
避け切れなかった雪千代の右腕が力なく垂れ下がる。
激痛に耐えながら彼は無事な左手に太刀を持ち替えて間合いを取る。

こんなのを顔面に…
絶対ぇ許せねぇ!!

痛みよりも、怒りが勝っていた。
「俺をオカマって言ったのも許せねぇが!女の子の顔面に手を上げたてめぇは万死に値する!!!」
「ほざくなオカマぁっ!!」
ジェルドランは怒鳴りながら、とどめの一撃を放とうと迫る。
「姫っ!!」
舞楽は魔石の力を解放し、薄紅色の光波をジェルドランに放つ。
「むぅぅっ…」
予期せぬ方向からの攻撃で、彼は体勢を崩してしまう。そこへトモカイザーがレーザーブレードよりレーザー光を放つ。
「スマッシュレィザー!!」
「ぬはぁ!?」
ラベンダーカラーのレーザー光はジェルドランに当たると爆発を起こした。

今なら!!

雪千代は化粧麗人に魔力を集中させる。すると、刀身が氷で覆われる。
「食らえ!氷破剣(ひょうはけん)!!」
太刀を振り下ろすと、剣先から無数のツララが発射され、ジェルドランに降り注ぐ。
「ぬがああああああっ!!!」
ツララは彼の全身に突き刺さり、爆発する。
「やったんですか…?」
志保は腰を抜かした様にその場にしゃがみこみながらその光景を見守る。

「…さすがはイキッモを倒しただけはあるな…」
全身を青い体液で濡らしながら、ジェルドランは目の前の敵を睨みつけていた。
「これでもダメなのか…?」
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