混沌的世界戦記・ヴィジュアル侍乱闘編

□第十五話 強敵に備えてやる事といったら…
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「我、心にて悪しき存在を断つ!黒天流剣術・雷爆剣(らいばくけん)!!」
目の前の空間から愛用の大剣を召喚し、技を繰り出すギィティール。
剣から放たれた雷撃は相手を直撃する。
「グギョギョッ!?」
彼の攻撃を避け切れなかった三つ目の兵士達は激しく吹き飛ばされる。
「後はアタシ達に任せてアンタ達はこの娘達と安全な所へ!!」
抜刀した雪千代は警官達に命令する。
「た……頼む…」
警官達は負傷者を抱え、舞楽達に先導されてその場を離れる。
回りの安全が確保された事を確認すると、雪千代は安堵の笑みを浮かべる。
「何者だ貴様ら!!」
牛顔の兵士イキッモは身構える。
「それはこっちのセリフよん♪アンタらがヴェルヌ結社だね…?」
口調とは違い、殺気むき出しの雪千代にイキッモはこの星に来て、初めて戦闘中に緊張した。
(この女、只者じゃないな…)
しかし、彼が男だと言う事までは見抜けなかったようだ。
「女ぁ!!邪魔立てするなら容赦しないぞ!!」
怪人の言葉を聞いて雪千代はにんまりし、ギィティールと変身したトモカイザーは苦笑する。
「残念だけどアタシは男だよ!間違えてくれてありがとねっ!!」
小生意気に微笑む彼を見て、イキッモは言葉を失った。
「ギョギョッ!!」
三つ目兵士の声で我に返った怪人は拳を握り締める。
「オカマの分際で戦場に出てくるとはいい度胸だ!!あの世で後悔するがいい!!」
怪人は両腕を交差し、気合を入れる。
「…んだとてめぇ!この俺がオカマだと…!!」
さっきまでニコニコしていた彼の形相が瞬時に変貌する。怒りに満ちた顔は怪人すら怯ませてしまう。
「なっ…何だコイツ…」
ここ数日、戦闘した駆除師達とは比べ物にならない程の異質な気の女装男にイキッモは身震いする。
「ヴッ殺してやる!!!!」
そう叫んだ雪千代は即座に怪人との間合いを詰めて、太刀を一閃する。

ズブシャッ…

「何ぃ…………」
怪人の右腕は、肩から綺麗に切り落とされていた。
更に、自分の視点が徐々にずれていくのがわかった。
「あれっ…?おかしいな…」
彼の顔が横一文字に分断され、地面に落ちる。
その間にも彼の体は小さく細切れに切断され、攻撃された事すらもはっきりわからないまま、イキッモは絶命した。
「ギョギョギョッ!!!」
残った三つ目兵士達は上官と思わしき怪人が倒されたのに、一糸乱れぬ連携で雪千代に襲い掛かる。
「おぅらぁっ!!」
ギィティールは大剣を振り回し、兵士を弾き飛ばす。そこへトモカイザーがレーザーブレードで追い討ちをかける。
「食らえ!トモカイザースラッシュ!!」
「ギョギョギョォォォォォっ!!!!!!」
兵士達は胴体から切断され、各自綺麗に爆散していった。
「ふんっ、アタシをオカマ呼ばわりしたんだから、これくらいやってあげないと失礼よね♪」
いつものお姉口調に戻った雪千代だったが、その言葉にはいささかトゲが残っていた。

ヴェルヌ結社との初戦は、牛顔の怪人イキッモから発せられたオカマという言葉に逆上した雪千代の剣技で幕を下ろした。
他の戦闘兵士もギィティールやトモカイザーによって倒され、戦闘は彼らの予想に反して呆気なく終了したのであった。

負傷者の回復作業も終わり、その状況を見つめていた志保は傍らに立っている舞楽に聞いてみた。
「姫さんって、オカマって言うとあんな怖いキャラになるんですか?」
「色々あってあんなスタイルしてるけど、本当は優しくてよく泣くのよっ」
舞楽はそういって微笑んだ。
「だけど、オカマって言うとキレるからくれぐれも注意してねっ…」
そう言いかけると、その場に雪千代が近寄ってきた。
「なんかオカマって聞こえたけど、何の話?」
口調は優しいのだが、目はすわっている。
「姫、キレてるんじゃないっ?」
舞楽は微笑みながら問いかける。すると彼は慌てた様な表情に変わり
「キレてないわよ。アタシをキレさせたら大したものよね♪」
と、作り笑いを見せる。
「……オカマ……」
そこへ、よせばいいのにトモカイザーがボソリと禁句を言ってしまう。
その言葉を聞き逃さなかった雪千代の顔は次第に怒りで赤くなり
「んだとてめぇ!!ヴッ殺してやる!!」
先ほど同様、太刀を振り回して暴れだしてしまう。
「キレてるじゃんっ…」
呆れたような口調で舞楽は溜め息を吐く。
「キレテ〜マスヨ〜♪」
棒読みの片言口調でトモカイザーを追い回す雪千代。
それは、はたから見るとコントの様でもあった。

一方、イキッモからの連絡が途絶えたジェルドランは自室で一人、不敵な笑みを浮かべる。
「どうやら俺を楽しませてくれそうな強いヤツがいるみたいだな」
そう言い残し、彼は部屋に備え付けられているパソコンにも似た機械のスイッチを入れる。
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