novel
□真を隠す鎧兜
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クロティルド―傭兵街。
派手なニワトリのような飾りが付いた騎士の兜だけを被った小さな体がフラフラと店内からつながっている庭に出た。
「ぷはーっ!!」
兜から顔を出したのは、兜には小さすぎる顔。
「あー、もうっ!!息がしずらいったらありゃしないっ!!」
いくらか涙目のまま愚痴を零す。
亜麻色の髪の毛をバッサリ耳元で揃えて切っていたので男の子のようにも見えるが、その愚痴を零す声を聞けば女の子だという事がわかる。
男の子のフリをしている女の子。
「なんで、こんなに重いのよっ〜!!首が潰れちゃうじゃない!!」
「…ミヒャエル、いやミミ…。大丈夫か」
店から顔を出してきたのは、この店の主人・ユルゲンだった。
彼の顔に付いているいくつもの傷を見れば彼も昔、傭兵だったという事がわかる。
「ユルゲンさん、はい大丈夫です」
彼はミミが男の子のフリをしている理由を知っていて手助けをしてくれているのだ。
ミヒャエルとミミに男の子の名前を付けてくれたのもユルゲンだ。
「お客さんですか?」
ミミは兜を両手に首を傾げた。
確か、ミミが出たときは客はいなかったはずだが…。
「あぁ…」
「ミヒャエル、こっちにいるのか?」
「!?」
ユルゲンとは違う男の声が聞こえてミミの心臓は跳ね上がった。
慌てながらもスポッと兜を被る…のだが、勢いが強すぎたのか…いきなりの重い兜に耐えられなかったのか…ミミはよろけた。
「…っと…大丈夫か?」
「!?」
よろけたミミを支えてくれたのは、ぶっきらぼうに前髪を伸ばした青年…特徴からしてクロティルド人というより敵国マルグリット公国の人間のようだ。
ミミはガチャガチャと首を縦に揺らす。
(エリック…っ!!なんで!?)
自分の元から何も言わず立ち去ってしまった愛しい人…。
ミミと共にカンタン王国で過ごしていた元第一王子エリック・セヴラン。
ミミは彼を追ってクロティルドまでやって来たのだ。
…男装までして…。
でも、いざとなったら顔を会わすのが怖くて…バレたら、きっと怒られてカンタン王国に戻されて一生会えない気がするから。
だから、嘘でも突き通して貴方の側にいたい…。
「待っているように言わなかったか?」
「悪い。あんたが裏の方に向かったから、ちょうどいいかなって思って…」
「何がだ」
「えっと、またミヒャエルに剣を教えようかと思って来たんだ」