novel
□Valuable Time
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エリックと私は育ってきた環境が違いすぎる。
でも、私もエリックの事が大好きなの…。
いつからなのかしら…こんなに好きになったのは…。
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「エリック具合はどう?」
クロティルド王国
今まで隣国であり敵国の第一王子だったエリック・セヴランがエーリヒ・アマディウスとしてクロティルドに戻ってきたのは少し前の事だ。
その時は肩に深い刀傷を負っており一時は助からないのではないかと思われていたが、今では起き上がることも出来るようになっていた。
「あぁ、大分いいよ」
「そう、よかった」
エリックの近くにいた者ならば薬や気力で治した以外に、エリックがやって来た時からそばにいてずっと看病をしていた亜麻色の髪の毛を耳辺りでバッサリ切りそろえている、この"少年"のおかげとも思うのだろう。
「ミミ」
エリックが手招きをする。
「なあに?」
ミミと呼ばれた"少年"は素直にエリックに近寄る。
すると優しく抱きしめられた。
「俺以外に誰もいない時でも"男"のふりしてるなよ」
「もう癖なのよ。それに、いつ誰が来るかわからないし…」
「平気だよ。俺の部屋に来る奴なんてセルジュとか、そこらへんだろ?」
「…セルジュでも、ぼ」「わたしっ」
「そう、私…睨まれるし」
「睨まれたって構うもんか。お前は俺だけ見てればいいんだよ」
ボンッとミミの頬は赤くなった。
エリックの腕の力が強まる。
「だっダメよ、エリック…安静にしていなくちゃ」
「もう我慢できない」
大好きな低い声が耳元で響けばミミも彼を甘えさせてあげたくて力を抜く。
見つめ合えば顔は自然に距離を縮めて…。
私…ずっとずっと初めて会った時からエリックの事、好きだったんだ…
とミミは思う。
気付けなかっただけ。
ううん、気付かないようにしてただけなんだ。
なのにエリックはずっと私を想っていてくれた。
私は…エリックと身分違いの恋に落ちないように必死だったのに。
…結局、耐えきれずに落ちちゃったんだから、もっと早くに気づいてあげたかった…。
お互いに見つめ合い微笑みを交わすと、また顔を近づける。
「やあやあやあ、失礼いたしまするぞ!!エーリヒ殿下!!今日のお体の具合いかが……ッ!?」
とうもろこし頭の騎士がエリックの部屋にノック無しで入ってきたものだからエリックとミミは、お互いを抱きしめあったまま固まってしまった。