白哉×緋真
□心美
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朽木随一の庭園に咲く桜の木の下に、緋真はゆったりと佇んでいた。
「緋真」
「!」
急に自分の名を呼ばれ振り向くと、そこには愛しの男(ひと)。
「またか」
「・・・・・」
“またか”その言葉はゆっくりと緋真の胸に落ちていく。
彼女がここに来るのは、今では日課になっていた。
「白哉様」
「桜とは、こんなにも素敵なものだったのですね」
その言葉に一瞬目を見張る白哉に、緋真はゆっくりと続ける。
「流魂街にいたころの私にとって、桜は恐ろしい物でしかなかった。
初春に美しい花を咲かせ人々を喜ばせ・・・でも、雨が降れば散り土の上で腐る。
まるで、
“あなたもいつかそうなるのよ”
と言われているようで」
「でも、ここに来て、やっとわかったんです。
花は散るから美しいのだと。
そして、散った後も人はその美しさを覚えていると。
白哉様、私は・・・死んでも貴方に愛されとうございます」
「緋真」
言葉が終わるかわからぬうちに抱きしめる白哉。
「お前は、俺が守る。
死なせなど・・・しない」
その腕は、きつく緋真を抱きしめ離そうとはしなかった。
ゆっくりと白哉に腕を回す緋真。
その瞳は嬉しさの色に満ちていて。
「ありがとう・・・白哉様」
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