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誰か嘘だと言って!
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今日一日の授業は終わり、生徒達は自分が所属している部活に向かう。
週に一度しかない部活の部員、帰宅部の生徒は帰るが。
この学園の高等部二年の朱貴は弓道部と料理部に所属し兼部している。
今日は週に一度の料理部はお休みなので学園の弓道場に向かう。
そこが弓道部の活動場所。

今、弓道部は大会も近いので部員達の最近の練習にはよりいっそう熱が入る。
気がついたら外は暗くなっていた、なんてよくあることだ。
今日も外が暗くなるまで弓道部は活動し、終わった時間は既に午後八時を過ぎていた。
部活は終わっても自主練としてまだ弓道場に残る部員も多い。
朱貴もそのなかの一人だった。
弓道場は静寂に包まれ集中出来る。

「ねえ、そろそろ終わらない?」

静寂に包まれた弓道場に一人の声が響く。
朱貴と同じく遅くまで練習している天山勇の声だった。
朱貴が時計を見ると時間は九時を過ぎていた。
時間に経つにつれて自主練していた部員も帰っていき結局この日、一番遅くまで残っていたのは朱貴と天山勇だけだった。

「そうね。そろそろ終わりましょうか」

「じゃあ一緒に帰ろ?」

「なんで私がアンタなんかと帰らないとならないのよ」

「うわあ、相変わらず辛辣……」


天山勇はいつもこうして朱貴の気を引こうとする。
それを朱貴は理解出来ない。
何故いつもこんなことをしてくるのだろうと思うばかり。
二人は自主練を終え更衣室に行き朱貴が弓道衣から制服に着替えようとした瞬間、背後に嫌な気配を感じた。
恐る恐る後ろを見ると後ろにはいつの間にか天山勇が立っていて笑みを浮かべていた。
その笑みにどことなく恐怖を覚えた。

「………………何?」

「いつになったらボクの気持ちに気がついてくれるのかな?」

朱貴は頭の上に疑問符を浮かべた。
彼は一体何が言いたいのか…?

「知らないと思うけどこの弓道部の部員の殆ど朱貴に想いを寄せてるんだヨ?」

「え……?」

「容姿、声、性格、練習に臨む姿勢。
全てに惹かれてるってこと」

朱貴自身にとって考えてみればあり得ないことをつらつらと述べられ頭が真っ白になる。

「ボクもそのなかの一人。
ボクはクラスが違っても朱貴のことをずっと見てきた
ずっと前から朱貴のことが好きなんだヨ」


天山勇の手によって朱貴の体は後ろにいる天山勇のほうへ向けられた。

「絶対に朱貴はボクのことを好きにさせてやるから。これはその誓約」


そう言われ頬に軽く口づけをされた。
可笑しい…
同じ男である彼に頬だったが口づけされたのに嫌悪感が全然沸いてこない。
普通なら嫌悪感を抱くはずなのに。
寧ろ嬉しく思っている自分がいた。

「(まさか、私が彼のことを好きだっていうの?
無意識のうちに好きになっていたということ?
嘘……!?)」















誰か嘘だと言って!
認めたくないの、この気持ち
(自分の気持ちに素直になっていいじゃない?)

















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