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※桜紅葉
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綺麗な満月の夜だった。
見る者全てを魅了するような美しく綺麗な満月。
窓から美しく輝いている満月を朱貴は既に寝間着を着ていつも結い上げている髪を下ろして見ていた。
今まで見てきた月のなかで今夜の月は一番、綺麗なんじゃないのかと思いながら。

暫くのあいだ、月を見ているうちに睡魔が襲ってきたので寝台の上で横になろうと思い月から室内に視線を戻した刹那、窓から物音が聞こえ人の気配を感じた。
振り返らずとも分かっている。
こんな時間に自分を訪ねる人間など一人しかいない。

「良かった、まだ眠ってなかったんだネ。」


いつも何故か窓から入ってくる天山勇。
窓から部屋に入り、寝台の上に座った。

「何の用?こんな時間に」

「クスス…しらばっくれるんだ?本当は分かってるくせに」


朱貴の腕を掴み、強引に引き寄せて寝台の上に押し倒した。
朱貴の両腕は抵抗されないために予め持ってきた布で一纏めにした。

「随分と用意周到なのね」

「朱貴は絶対に抵抗してくると思っていたからネ。こんなことされて今の気分はどう?」

「最悪」

言った言葉とは裏腹に朱貴は挑発的でどことなく妖艶な笑みを浮かべた。
昼間、見たときとは別人に見えた。何処か余裕そうで。
その言葉を聞いて満足そうな笑みを浮かべた天山勇は朱貴に口づけた。
昼間、舞い散る紅葉のなかに交わした口づけとは違う深い口づけ。
朱貴の口腔内に舌を入れて弄んだりして。
そうしているうちに朱貴も舌を絡ませてきた。
気をよくしたのか天山勇は角度を変え、更に深く口づけて朱貴もまたそれを受け入れた。
互いを貪り合うような口づけは今回が初めてだった。
長いあいだ、口づけをして満足したのか天山勇は唇を離した。
朱貴の目元に浮かんでいた雫に気づき、雫を舐めて優しく瞼に短く口づけた後、まじまじと朱貴を見た。
色白の肌にほんのり薄紅色に染まった頬、潤んだ綺麗な瞳と唇、長い間、口づけをされていたためか肩を上下に動かして酸素を求めていて潤んだ瞳はじっと天山勇を見ていた。
天山勇から見れば酷く官能的な朱貴が目に映った。
それと同時に残酷なほどに彼の嗜虐心が煽られた。


「朱貴、凄く色っぽいヨ…」

もっともっと、乱れさせてあげる
ねえ、次はどんなことされたい?
僕しか知らない朱貴を見せてよネ



朱貴が着ていた寝間着を破るように無理矢理、脱がせると類い稀なる美しい肢体があらわになった。
餓えた獣のように一晩中、朱貴の身体を求めた。
朱貴は何も抵抗せず自らの身体を天山勇に委ねた。
朱貴が抵抗しないことに気づき、一纏めにした腕を戒めから解放した。
解放された腕で天山勇を求めた。
ただただ、ひたすらに。
いつもは決して見せない淫らで情欲に染まった朱貴を今、独り占めしているんだと思うとおもわず笑いが溢れそうになる。
聞こえてくるのは目の前にいる愛しい人の淫らな喘ぎ声。
聞くたびにゾクゾクする…
また更に嗜虐心が膨らんでいく。
どんどん、酔いしれていく。

結局、一晩中互いを求め続けた。
まるで獣のように。















朝、目を覚ますと隣には愛しい人がまだ眠っていた。
いつの間にか自分も朱貴も眠っていたんだろう。
昨夜の記憶は激しく互いを求めあった情事のとき以外のことは無かった。
隣でまだ安らかに気持ち良さそうに眠る愛しい人を起こさないように天山勇は起き上がった。

外に目をやるとまた風が吹くなか紅葉が舞い散っていた。
地に落ちた紅葉と残された木。
彼の目には紅葉は酷く憐れに見えた。
落ちた紅葉はもう決して今まで同じ時間を過ごした木と一緒にいることは出来ない。
落葉したら同じ時間を感じることなど叶わない。


だけど僕はそんな憐れな思いはしない。


そして決してこの愛しい人を逃がしはしない。
この獣の皮を被る美しき鳥を。
自分という鳥籠のなかに永久に閉じ込めてしまおう。












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