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□紅葉
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空は美しく澄んでいる青の色。
そして風に揺らいでひらり、ひらりと舞い散る紅葉。
また秋が巡ってきた。
青く澄んでいる空、葉が美しく赤や黄に染まった木々、風と共に舞い散る紅葉を朱貴は見ていた。
舞う紅葉を掴もうとして手を伸ばしたが紅葉は朱貴の手には落ちず、ひらりと地に落ちた。
また、手を伸ばしたがやはり掴めなかった。
そのとき、ふと違和感を感じた。
(この感じは…)
何か自分に刺さる視線に感じて辺りを見回そうとした瞬間、後ろから何者かに抱き締められた。
「朱貴……」
何者なのかは後ろを見なくても分かっていた。
いつもいつも自分に引っ付いてくるあの人、天山勇。
「離してくれるかしら?」
「嫌だヨ。あんな朱貴を見たら抱き締めたくなるに決まってる。」
さらに強い力で抱き締めてきた。
それと同時に耳に息を吹きかけられ、服をまさぐられた。
「ちょっ…!こんなところで真っ昼間から盛らないで!」
「それじゃあ、夜だと良いの?」
「そういう問題じゃない…っ!」
まさぐられていた手で顔を天山勇のほうに向けらて、ほぼ無理矢理口づけされたが唇はすぐに離れた。
驚いていている朱貴とは相反して天山勇は意地悪そうな笑みを浮かべていた。
「夜、楽しみにしててよネ。朱貴」
耳元で囁かれた言葉に頬に熱が集まるのを感じた。
抱き締められていた感覚が無くなり気がついたら天山勇はいなくなっていた。
「馬鹿…。」
自分一人しかいなくなった紅葉舞い散るなか未だに赤い顔で呟いた。
本当は誰よりも、愛しい人に向けて。
†