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※緋色月
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ああ、またかと思った。
戴宗は林冲の上に馬乗りになっていた。
そして戴宗は林冲の首を絞める。
いつからか戴宗は林冲の首を絞めるようになった。

林冲は目を閉じた。
いつも何故かギリギリのところまで絞められるけど恐怖なんて感じない。
寧ろ、酷く気が休まって。
このまま殺してくれないかと思うほどだ。
首を絞めてくる手から感じる戴宗の体温。
それが心地よくて好きだった。


ギリギリのところまで絞めたら戴宗は林冲の首から手を離した。


「もう、手を離すんですか?」

「……本当はもっと絞めていたいんだけどな。勝手に手が離れるんだよ。」

「そうですか。それじゃ、今度は私の番ですね。」


言い終わった瞬間、体制が逆転し林冲は自らの手で戴宗の首を絞めた。
戴宗も林冲と同じで恐怖など感じていない。
戴宗は首を絞められているあいだはずっと林冲の目を見ていた。
林冲の目はまるで切なげに見えた。


(嗚呼…綺麗だな――)

コイツは本当に綺麗だ。
何もかも、全部。
俺なんかと違って


林冲に首を絞められながらそう思ってると戴宗は手を伸ばし、再び林冲の首を絞めて体制までも逆転させた。
口には笑みが浮かんでいた。
そんな戴宗とは対称的に林冲は不満げな表情を浮かべた。
驚いて首を絞める力を緩めてしまったが林冲は戴宗の首から手を離さなかった。


「いきなり何するんですか。もっと貴方の首を絞めていたかったのに…。」

「悪かったな。おたくの顔見てたらまた絞めたくなった。」

「相変わらず貴方は我が儘ですよね…。私の気持ち、考えたことあります?」


ぐいっと戴宗は林冲に顔を近づかせて「あるに決まってんだろ?」と言った。
そして林冲に噛みつくような口づけをした。
暫くしてると林冲は酸素を求めるためか少しだけ口を開けた瞬間に舌を入れ林冲の口内を弄び、嬲ってやると籠った声が聴こえた。
戴宗は満足すると口を離した。
肩を上下させ呼吸をする林冲を見て笑みを浮かべた。


「貴方は手加減という言葉を知ってますか?」

「さあな?」

「そう言うと思いましたよ…。」


林冲は呆れた目で戴宗を見たが当の本人は林冲ではなく違うものを見ていた。
窓から見える綺麗な夜に浮かぶ妖しく輝く赤い満月を見ていた。


「満月は人を狂わすって聞いたことあるな。しかも今夜は赤い満月なんてな。普通の満月よりも狂わす力が強かったりして?」

「そうかもしれませんね。満月に狂わさせているのかもしれませんね、私達。」

「随分と滑稽なことだよなあ?月に狂わされるなんてさあ。」

「…そうですね。」


おもわず、林冲も笑みを浮かべた。




「なあ、林冲。俺はおたくを殺したいほど愛してるぜ?絶対に他の奴になんざ殺されるなんて許さねーよ。おたくを殺すのは俺だ。」

戴宗の口から恐ろしい言葉を言われたが林冲は顔色一つ変えずに戴宗を見ていた。


「それは此方の言葉ですよ、戴宗。私も貴方を殺したいほど愛してます。貴方が他の人に殺されるなんて絶対に許さない。貴方を殺すのは私ですよ?」



二人の瞳に狂気の色が宿った。いや、既に宿っていたのかもしれない。
この二人の先に待っているのは狂喜なのだろうか。それとも狂気なのだろうか














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