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※零れ堕ちるは紅涙か
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「杜遷、杜遷、杜遷、杜遷…。」


何度も杜遷の名を呼ぶ。
いつもの明るい声ではなくか細い声で。
こんな状態の朱貴は酷く幼く見えた。
愛情を求める子供のように。
彼のこんな姿を知るのは杜遷だけだった。
朱貴は涙を流し、杜遷を求めた。


「大丈夫だよ、朱貴っちゃん。僕は此処にいるから。」


朱貴を優しく抱き締めた。
幼子を抱き締めるように優しく。
朱貴は杜遷にこうやって優しく抱き締められるのが好きだった。
杜遷はいつも優しくて温かくて。
そして何より彼の体温が好きだった。


「何処にも行かないわよね…?一人きりにしないでくれるのよね…?」

「僕は朱貴っちゃんを置いて何処にも行かないし一人きりにもさせないから。」

朱貴の目から溢れ出た涙を拭い、杜遷は愛しげに朱貴の目許に優しく口づけをした。
そうすると朱貴は今まで泣いていたのが嘘のように笑顔を見せた。


「もう少し…もう少しだけこのまま抱き締めていてくれる?」

「良いよ。いつまででも…。」











暫くのあいだ、抱き締めていると朱貴の規則正しい寝息が聞こえてきた。
いつの間にか寝てしまったのだろう。
寝床に寝かせようと思い、朱貴を抱き上げたとき赤く染まった袖口が目に入った。


「また、切っちゃってたのか…。」


今ではなく、なんでもっと早く気づけてやれなかったんだろう、と思った。

袖を捲ると色白い綺麗な肌にはいくつもの傷痕。
血が止まった傷もあれば、まだ血が流れ出ている傷もあった。
止血をし傷口に薬を塗り、包帯を巻いた。
いつからか朱貴は自傷をするようになった。
杜遷が止めようと言ったら止めようと何度も思ったけどどうしてか止めれないのよと返されたときのことを思い出した。

杜遷は手当てをして朱貴を寝床に寝かせた。
そして先程、手当てをした腕を見たら止血したはずの傷口から血が出ているのか包帯で巻かれた一ヶ所に薄く血が滲んでいた。
それを見ると杜遷は血が滲んでいた箇所に口づけた。



これ以上、朱貴っちゃんが自分自身を傷つけませんように。
どうすれば僕はキミの紅涙を止めることが出来るだろう。










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