Librobreto V
□彼者誰時奇譚
2ページ/4ページ
ああ
その待ちに待った瞬間が
遂に来る
周りは俄かに色めき立ち
全てのものそれぞれが
輝き始める
霧は瞬く間に
黄金(きん)の息吹に
吹き払われ
その残骸は
私達の髪先や
草や木の葉に
つぶらに留まる
地面に映し出された
分身により
無作法者の私達の姿は
まさしく
白日の下に晒された事を
知った
.
―人が住まう
地上(ここ)は
こんなにも美しく
素晴らしいのだ―
そう呟いた
あなたの横顔は
『神の化身の如く
強き戦士』
などでは無く―
ただの
一人の少年だった
あなたの語りに
心震わせた私と
違(たが)わず
あなたも
目眩(めくるめ)く
世界の移ろいに
心動かされる
一人の人間だったのだ
.