Librobreto V

□彼者誰時奇譚
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ああ

その待ちに待った瞬間が
遂に来る


周りは俄かに色めき立ち
全てのものそれぞれが
輝き始める




霧は瞬く間に
黄金(きん)の息吹に
吹き払われ

その残骸は
私達の髪先や

草や木の葉に
つぶらに留まる



地面に映し出された
分身により
無作法者の私達の姿は
まさしく
白日の下に晒された事を
知った




.
―人が住まう
地上(ここ)は
こんなにも美しく
素晴らしいのだ―






そう呟いた
あなたの横顔は


『神の化身の如く
強き戦士』
などでは無く―


ただの
一人の少年だった




あなたの語りに
心震わせた私と
違(たが)わず

あなたも
目眩(めくるめ)く
世界の移ろいに

心動かされる

一人の人間だったのだ

.
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