Librobreto V
□繋げるもの 繋がるもの
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―そういう訳で、貴鬼は一人、ジャミールの館で留守番の役目を仰せつかっているのである。
しかし、ただ漫然と館の番をするのみで無く、師の不在中でも日課を熟(こな)さなければならぬので、最初の二、三日はわりあいと真面目に取り組んでいた。
が、しかし、どんな世界に身を置こうとも子供は子供、集中力や根気はいつまでも続かぬものである。
四日目にしてとうとう課題を放り投げ、『物置探険』と言う、中々魅力的な計画を実行するに及んだのである。
この時点で、ひとりぼっちの淋しさは何処へやら、この探険を大いに楽しもうと気分は一転したらしい。
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鉱物の加工や、造形等の実践演習は、貴鬼は大好きなのだが、地質学や鉱物学、化学や数学と言った高度な専門知識の習得に加え、古典ギリシア語やらラテン語やらを学ぶとなると―
―大人でもその難解さに頭を痛めそうな学術ばかり―
―たった一人で机にずっとかじりついてなど、どうして出来よう?
「よし、じゃあ、まずはおべんと作んなきゃ。」
この館は、複数階建ての塔の様な構造で造られており、一階が工房、二階は厨房と食卓兼居間、三階はムウの書斎と寝室、そして四階が貴鬼の部屋と手洗い場、五階が書庫兼物置部屋。
本日の目的地は五階。探険が長丁場になると見越して、厨房で温かい飲み物を保温容器に注ぎ、半分に折った平パンに塩漬肉とチーズを挟んで軽食を作った。それらと干しいちじくの幾つかを大判の布で包むと、貴鬼は意気揚々と冒険を開始した。
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