Librobreto UVerdaj tagoj

□アオ ノ セカイ
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「彼は瞑想中ですから、取り合ってはくれないでしょう。今日は諦めなさい。」







師匠のこの忠告にやけに従順な返事をした弟子は、その実、師の言は耳から耳、師が作業を再開する為に自宮の奥へと引きこもり、姿が見えなくなった途端、脱兎の如く外へと飛び出した。




風雨に晒され続け、古びて不揃いになった石段を跳ねる様にして、少年は上へ上へと駆け上がる。




少年―貴鬼が、師である牡羊座のムウ守護する白羊宮から目的の宮に到るには、間の四つの宮を通過しなければならぬ訳で、それぞれの宮には勿論、そこを与る黄金聖闘士が在位しているのだが―




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―金牛宮の豪快な主は訓練生の指導に出ていて不在。



次の双児宮の美丈夫の兄弟は、兄は教皇宮詰め、弟は海界からまだ帰還しておらず不在。



三番目の巨蟹宮の老獪な切れ者は、外地任務を終え帰還した直後、教皇宮にて報告を行っている為不在。



最後の獅子宮の勇猛果敢な守護者は、彼の兄である人馬宮の英雄と村へ出ていて不在。―





―と、まあ、本来ならば、目的の場所までに幾人もの猛者達が待ち構えている筈なのだが、血沸き肉躍る対峙が巻き起こる雰囲気は皆無であり―


―尤も、貴鬼は別に不穏な十二宮突破者でも何でも無く、…仮にそうだとしても、身に纏う鎧も持たぬ代わりに、布で包まれたなにがしかをその小さな背に負う少年に、地上最強の戦士が、その小宇宙の片鱗を見せ付けるのみで、勝敗は決してしまうであろうが―


―そんな訳で、貴鬼は着実に宮を駆け抜けて行くのであった。

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